●『Happy Merry X'mas ♪』
大好きな雪姫とリンクに降りた流火は、キラキラ輝くイルミネーションに夢中になる。 中でも目を奪われるのは、中央にある電飾の巨大なクリスマスツリー。 「雪姫、あっちあっち! 早く行こう〜♪」 好奇心の塊のような流火の様子を微笑ましげに見守っていた雪姫は、差し出す弟の手をとって一緒に滑り出す。 氷を切る音を引きながら、流火の尻尾が左右に大きく揺れる。 猫の耳も風を受けて震えている。 スピードが上がり、視界を流れるイルミネーションが、まるで光の魔法のよう。 「すてきね。すてきねーっ」 「あらあら、本当に素敵なツリーですね♪」 興奮する流火につられ感嘆を漏らす雪姫。 黒髪を洗う風が気持ちいい。 クリスマス仕様のリンクを手を繋いで二人で滑る。 なんでもない事がこんなに楽しいのは、大好きな弟と一緒にいるからだろうか。 「えーいっ。どう? いっぱい見えるー?」 「あらあら、うふふ♪」 流火に軽々と持ち上げられ、嬉しそうに微笑む雪姫。 そのまま二人はリフトの状態のまま、フィギュアスケートのペアのように滑り出す。 仲良し姉弟の呼吸は、本職のそれと同じようにぴったりなのだった。 キラキラ輝くツリーを眺めながら思う存分滑る二人。 体が冷えて来たところで一旦リンクから上がり、二人して温かいココアで一休みする。 「あちっ!」 「あらあら、気をつけないと駄目ですよ? お姉ちゃんがふーふーしてあげましょうか?」 寒かったのだろうか、猫舌なのを忘れて一気に飲み込もうとした流火は、熱々のココアに舌を焼かれて跳びあがってしまう。 そんな可愛らしい弟に目を細めているお姉ちゃんの提案に、流火は即答でお願いする。 「あらあら〜」 本当は少しからかっただけなのだが、無邪気な笑顔でココアを差し出す流火の可愛らしさに一瞬でノックアウト。 照れて顔を赤くしつつ、弟の為に『熱い飲み物』を冷ましてあげる。 「さあ、また滑りに行きましょう♪」 「うんっ!」 充電完了。 体も温まって元気を取り戻した二人は、再び手を繋いでリンクに降りる。 仲良し姉弟は大好きな人と一緒にすごす幸せを繋いだ手に感じながら、楽しいクリスマスのデートを続けるのだった。
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