エリオット・パラダイム & リゼット・ドギー

●『Singin' in the Christmas』

 今日はクリスマス。
 ふたりで素敵なこの日を迎えたエリオットとリゼットは、銀誓館学園でのパーティーが終わってから夜の散歩へと出かけました。
 きらめくイルミネーションやちらつく雪を愛でたり、客寄せのサンタクロースに声を掛けられたりしながら、賑やかな街を歩くふたり。
 いつの間にか時間は過ぎて、夜は深く、人の姿も、まばらで……辿り着いた通りは街の喧騒も遠く、とても静かでした。

 今日は二人で色々な事をしました。
 銀誓館のパーティーではクリスマスカードを交換したり、キスを交わしたり。
 一緒にお茶やお菓子を楽しんだり。
 お話もたくさんしました。
 学園に来てから今までのこと、梅の花と一緒に写真を取った事、飾り方をいろいろ考えたこと。
 もちろん学園の事といえば勉強のことも。
 そして……自分のこと、家族のこと、昔のこと、これからのこと。
 友達のことや、今日のクリスマスのこと。
 手の中にあるミルクティの缶より……寄り添った肩の方が、ずっと温かかったこと。
 ですが……なんということでしょう!
 あまりにも長くお話をしていたものだから、静かなこの通りに来て、とうとう話題が尽きてしまったのです。
 沈黙が場を支配しようとしたその時、それを遮るようにエリオットは唄い始めました。
 それは、とある有名な映画の替え歌です。
 とつぜんの歌声にほんの少し驚いたリゼットに、エリオットは気取った仕草で手を差し伸べました。
「Shall we dance? My princess」
 その映画の俳優みたいな様子がおかしくて、リゼットは笑みをこぼします。
 それから彼女は、はにかみながら彼の手を取ると……声を合わせて唄い始めました。

 ささやかで温かな明かりにてらされて、ふたりだけの舞踏会がはじまります。
 ゆっくりと静かにふりそそぐ雪のなかで手を取りあって踊りながら、ふたりは一緒に声をそろえて唄います。
 そう……ひとりではなく、ふたりで一緒に。
 雪が降るのを楽しむように、むしろ降ってくる雪を自分たちの身で受け止めるかのように。
 楽しげな歌声と共に、ふたりの舞踏会はずっとずっと……続いていきます。
 舞い降りる雪に、見守られながら。



イラストレーター名:壱神タルホ