●『いつもと違うクリスマスイブ』
俺とさやかが付き合い始めてもう3年になる。その間俺たちはずーっとラブラブで、6月からは鎌倉の小さいアパートで同棲を始め、金はないけど楽しく暮らしている。 今日はクリスマスイブ。普段家事をしてくれているお礼に……と、俺は今日は主夫モードになることに決めた。青いエプロン姿でさやかにサービス。 とは言ってもチキンを焼いたり、ケーキを作ったりとかはできないから、買ってきたチキンやケーキを綺麗にテーブルに並べ、飲み物を用意した。もちろん準備だけじゃなく、片付けも最後まで俺がするつもりだ。 (「こんなの普段着慣れてないからなんか照れるな。男のエプロンは萌えるらしいが、俺はどんな感じに見えるだろう?」) 自分のしている青いエプロンを見ながらそんなことを考えていると、まるで俺の考えを読んだみたいな絶妙なタイミングで、 「エプロン似合うね」 さやかは柔らかく微笑んでそう言い、俺は少し頬が熱くなるのを感じた。
なごやかに食事を終え、ケーキに移行する前に。まずは俺から隠しておいたプレゼントを取り出して……。 「メリークリスマス、さやか!」 高らかにそう言って、さやかの目の前に小さな箱を差し出した。 「ありがとう!」 うれしそうにさやかがそれを受け取り、早速包みを解いた。 「わぁ、素敵……」 こぼれ落ちる感嘆。それは和服のさやかに似合いそうなレトロな懐中時計。表は花の模様、裏に刻んだメッセージはその花言葉である『永遠の感謝』。 俺と一緒にいてくれてありがとう。 恥ずかしくて普段あまり言えない気持ちを込めて……。 「大事にするね」 さやかはにこりと笑って大事そうに懐中時計をぎゅうっと抱きしめた。俺はまるで自分が抱きしめられたかのようにあたたかな気持ちになった。
「これは私から……だけど……」 今度はさやかのプレゼントを俺が受け取る番。だけど、何やら渡しにくそうにしている。 「ん?」 さやかはうつむきがちにリボンのついた包みを差し出した。 「すっごくつまらないものだから! 先に言っとくから!」 それを受け取ろうとした俺に、なぜか念押ししまくるさやか。 「大丈夫だって。さやかからもらうものにつまらないものなんてないよ」 あわあわするさやかが可愛くて。思わずくすくすと笑みがこぼれる。 箱の中から出てきたのはかわいらしい子虎のぬいぐるみ。 「招き虎、なの」 「へーそっか、来年は寅年だもんな。ありがとう、大事にするよ」 そう言って虎のぬいぐるみごと、小さくなって恥ずかしそうにしているさやかをぎゅっと抱きしめる。 「ずっと大事にするから」 ぬいぐるみも。さやかも。
メリークリスマス。 こんなささやかな幸せの一粒一粒が、とても大切な宝石のような宝物。 これからもさやかと一緒に。あたたかで愛のあふれる家庭を作っていきたいと、改めて強く思った。
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