●『二人の小さな一歩』
鮮やかなイルミネーションで彩られた街。空から舞い落ちる雪も、光に照らされてかすかに光っているように見える。 雪が降り、クリスマスソングが響く賑やかな街を、煉司と雪は、腕を組んで歩いていた。こうやって腕を組んで歩くのは、普段では少々気恥ずかしいが、今日はクリスマスだ。周りを見渡せば、他にも腕を組んで歩くカップルがたくさんいる。 二人っきりでの初めてのショッピングに、普段の時と比べると、らしくないほど雪は、はしゃいでいた。あちこちのウィンドーディスプレイを楽しそうに見ている。はしゃいでいるのを自覚しているのか、時たま恥ずかしそうな笑顔を煉司に向けてくる。 連司もまた、雪が楽しんでいるのを見ながら、一緒にショッピングを楽しんでいた。 「そんなに欲しいなら買おうか?」 せっかくのクリスマスだ。なにか進展のきっかけにと、連司は雪にそう問いかける。 「いえ、今日は一緒にいるだけでも十分なので……。どうせなら、来年のお楽しみって事で……」 そういって、雪は笑顔で首を横に振る。そう、クリスマスは何も今年だけではない。来年もまたくる。一緒にいれば、クリスマスでのショッピングの機会はいくらでもあるのだ。 賑やかな街を二人は、のんびりと歩く。あれからいろいろな物や場所を見て回り、いろいろ話をしたが、特にこれといった大きな進展はなかった。 「まぁ、ボクらはボクらのペースでいけばいいか……」 そのことに肩をがっくりと落とし、煉司が小さく呟く。 「何か……、言いました?」 連司の呟きに、雪は腕に少し力を入れつつ、首をかしげる。 「ん? この服が似合いそうだなって言っただけだよ」 煉司は誤魔化すようにウィンドウにある服を指差す。雪も笑顔で、ウィンドウを覗き込んだ。大きな進展はなかったが、楽しく過ごせたのなら良しとしよう。連司と雪はそう思い、二人で聖夜の街で願う。 願わくば……。 大好きな貴方と共にずっと一緒に、楽しく平和な日々が過ごせますように。
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