●『聖夜の奇跡? ツンデレ少女デレっぱなしの夜』
「メリークリスマス。せ、せっかくだから、来てあげたわよ」 ツンデレ気味な言葉を発しながらりのあの目の前に立つのはティリナだった。サンタの衣装を身に纏ったその背には、きちんとりのあへのクリスマスプレゼントが用意されている。 「いらっしゃいませなのです。メリークリスマスなのですよ」 迎える側となったりのあは、嬉しそうな笑顔でティリアを招き入れた。 部屋の中は全体的にクリスマス仕様に彩られていて、それだけでも心が躍る。そして通された先には、美味しそうな料理やケーキがテーブルの上で所狭しと言わんばかりに並べられていた。 「すごい……」 ティリナはそれらを目にして、感嘆のため息を漏らした。本当であれば体全部を使ってでもその喜びを表現したいところなのだが、持ち合わせたツンデレが邪魔して、表に出すことが出来ない。 「たーっくさん用意しましたので、遠慮せずにどうぞなのですよ」 ティリナと同じくサンタ衣装を身につけているりのあは、小さくくすくすと笑いながら彼女を椅子へと座らせた。 そして自分も向かい側の席へと回り込み、すとんと腰を下ろす。 「えへへ。ご主人さま、あーん、してください♪」 「……もう、りのあったら」 自分用に切り分けたのかと思ったりのあのケーキは、ティリナの口元へと運ばれた。 フォークの先にある美味しそうなケーキを前に、ティリナは僅かにためらいを見せつつも、唇を開く。 次の瞬間、口の中いっぱいに広がるのは、幸せがたくさん詰まった甘みだった。 「美味しいですか?」 「ま、まぁね」 りのあの問いに、またもやツンデレ気味な返答をしてしまうティリナ。だがまんざらでもないその声音に、りのあは満足そうに笑っていた。 「クリスマスを過ぎれば、もう今年も終わりね」 「そうですねぇ、色々ありましたなのです」 絶品料理を食べつつ、向かい合わせた席で二人は、会話を弾ませる。今年一年のことや、これから先のこと。何気ないやりとりであるが、二人とも幸せそうな表情だった。 「あ、ご主人さま、ほっぺについているのですよ? ちょっと動かないでくださいですよ〜」 「え? あ……」 りのあが顔を上げると、ティリナの左頬にケーキのクリームが付いているのに気がついた。 そしてそのまま身を乗り出しつつ、ティリナへと声をかけて行動に移る。 ぺろり、とりのあの舌が頬をなぞる感触がした。 それにティリナは頬を真っ赤に染め上げて、目を見開く。 「へへ……食べちゃったのですよ♪」 「や、やぁね、りのぁ……」 間近でいたずらっぽい笑みを浮かべながらそう言うりのあと、照れ隠しもままならない状態のティリナ。彼女の名すらまともに発音出来ずに、そんな言葉を返す。 そして二人は、視線を合わせて小さく笑った。
素敵な時間の中、ささやかなクリスマスパーティは、それからしばらく後も続けられるのだった。
| |