●『With you,Forever』
二人で迎えるクリスマスは、今年で二回目だった。 琴里と蒼十郎が並んで歩いていると、大きなクリスマスツリーが目に飛び込んでくる。「綺麗」と声にならない声を上げて、琴里はそれを見上げた。 そのイルミネーションの灯ったクリスマスツリーの下、蒼十郎が不意に足を止める。琴里も足を止めると、蒼十郎が口を開いた。 「え、えーっと……これ、受け取ってくれへん?」 言いながら、蒼十郎はちょこんとジュエリーケースを差し出す。 受け取って琴里がその蓋を開けると、中には『With you Forever』と内側に刻まれた、シンプルなプラチナリングが入っていた。 琴里はそれを見下ろして僅かに瞬く。
『ずっと一緒』だと――そう、約束した。 それが破られる気配なんて無いのに、一緒に居られるのが幸せで――幸せすぎて、壊れる日が来るんじゃないかと、琴里は不安に駆られる時がある。 それを見透かすように、いつも琴里をその不安から掬いあげる蒼十郎。 ……だからこれも、卒業を前に不安になってる琴里に気付いて用意したのかもしれない。
琴里は我知らず唇に笑みを刻みつつ、蒼十郎の顔と指輪を交互に見ると、指輪と左手を差し出した。 「付けて下さいです♪」 その言葉に、蒼十郎は琴里の左手を掬い取ると、もう一方で指輪を持って……ゆっくりと薬指に嵌めた。 蒼十郎の手の温もりと、左の薬指のひやりとした感覚……琴里にはイルミネーションよりも輝いて見える指輪の存在に、唇にまた笑みが浮かぶ。 琴里の笑顔に、蒼十郎の目が愛おしげに細められた。 蒼十郎は琴里の手を少し引き寄せて、自らが指輪をつけた薬指に口付ける。 「……愛しとるよ」 そう言って顔を赤く染める蒼十郎に、琴里は笑みを深めた。 蒼十郎の頬にそっと口付ると、琴里はそのまま蒼十郎の首に腕をまわして抱きつく。 「……大好き」 蒼十郎に告げて、琴里は心の中で呟く。 ――大丈夫、と。 (「ずっと続く幸せだって、きっとある」) 幸せそうに微笑む琴里を、蒼十郎は両腕で包み込む。 琴里の想いに応えるように、優しく抱きしめた。
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