●『メル…』
基とリカは銀誓館学園で同じ結社に所属している。今日はその所属結社のクリスマスパーティー用のグッズを用意するため、二人で街に買い出しに来ていた。 「あー……」 「あらぁ〜?」 あれがいい、いやこれがいい、それはセンスなさすぎでしょぉ、なにおぅ……と二人で散々もめて。時間をかけつつも一通り揃えられたのだが、買い物が終わって外に出てみると、店に来る前と景色が一変していた。 「あちゃぁ、傘も買って来ないと……」 そう言って基が頭を抱える。そこは一面の銀世界。いつの間にこれだけ降ったんだ、と聞きたくなるほどの雪。しかもまだしんしんと降り続いている。 基の中に今日雪が降る予定はなく、ショックを受けた顔の彼の横で、リカは冷静に鞄の中から蛙デザインの折り畳み傘取り出した。 「しょうがないから入れてあげます」 勝ち誇ったように言い、傘をさし出してくるリカに、 (「何、このエグイ蛙柄……つーか、折りたたみに二人は無理がないか?」) と、基は心の端っこで思ったのだが、ここぞとばかりに恩を売る気満々ぽいリカにそんなことを言える訳もなく、とりあえず大人しく入れてもらうことにした。 「……しょうがないから入ってやるよ」 だがしかし。狭いっ、低いっ! リカが傘を持ち、そのまま歩いてみたが……二人の身長差のせいで、やたらと傘の先端が基のあちこちに当たり、そのたびに基は顔をしかめていた。 「……しょうがないから持ってやるよ」 「しょうがないから持たせてあげます」
やがて二人は新雪が積もった脇道へ。まだ誰の足跡もなくぴかぴかの雪が二人を待っている。 「雪だるま作れっかな?」 歩くたびにきゅっきゅと音を立てる雪に少しわくわくしながら基がそう口にした瞬間。基の足元が滑り……持っていた傘と品物は宙に舞い、基も体制を立て直せず豪快に雪の中にダイブ! 「げっ!」 一瞬何が起こったかわからず、雪の上で基は茫然としている。 「あはははは! ドジッ子さんですねえ!」 雪まみれになっている基を見て、けらけらと愉快そうに笑いながらリカは素通りしようとして……基の足蹴りを食らい、顔面から雪へとダイブ、その2! 「へぶっ?!」 見事に雪に埋まり、やはり茫然としながらも、リカの手には雪玉が握られていた。 「滑りやすいから気をつけねーとな」 「……って誰のせいだと……っ」 ぱんぱんと身体についた雪を払い落して立ち上がろうとした基の頭に、ベシッと雪玉が命中する。 「ふ……ふふ、よござんす。そちらがその気なら、こちらにも考えがあります!」 ゆらりとリカが身体を起こし、基がギラリと瞳に剣呑な光を宿し。そして。 いつの間にやら荷物を放り出して、白熱した雪合戦に身を投じる二人の姿があったという。
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