●『学校帰りのホワイト?クリスマス』
「あっ」 クリスマスソングが流れる賑やかな夕方の街中で、下校途中だった藤吾はアリッサを見付けて声をあげた。 出会いは偶然だったけれど、もう暗いから一緒に帰ろう。どちらともなく言うと二人並んで歩き出す。
雑談をしながらの帰り道。 お互いよく似た性格をしているので、本当なら無言でも気にならない類友の関係なのだが、こうして話すのもやっぱり楽しい。 アリサも自分も、友人には優しさと思いやりをもって接するタイプだからだろうか。 白い息を吐きながら、ふと空を見上げると、ひらりと空から雪が舞い落ちてきた。 雪の降り始めに出会ったらしい。 「ホワイトクリスマスになったなー」 「あ、ホントですね♪」 のんびりマイペースなアリサは、くるりと回りながら喜んでいる。そうしてはしゃぐ姿は見ていて和むが、転びやしないかとも思ってしまう。 いつもの事だが、アリサは真面目に危なっかしくて放っておけない。 「アリサ、転ぶなよー?」 「ありがとう、大丈夫ですよ。マァ君は優しいですね」 アリサの柔らかい微笑みに、自分からも笑みを返す。 放っておけないからこそ、心配をしてしまうのだ。 だからこそ、やはり心配している事柄について尋ねてみる。
「そーいや受験勉強やってるか?」 「……!?」 アリサが周囲の空気ごと固まった。思わず彼女を見つめる目が生温くなってしまう。 「……やってねーな?」 「やる予定です」 「今すぐやれ! 浪人すんぞコラ!」 親しい関係だから出来る、慣れた漫才のような掛け合いだ。 ぽんぽんと交わされる会話を楽しんでいる途中で、アリサがくしゃみをして我に返った。 「受験生だろ。風邪引かないように、ほら」 自分の上着を脱いで、アリサの頭からかぶせる。 上着越しにこちらを見上げるアリサ。ぱちくりとした紫の瞳へ、悪戯っぽい笑みを向ける。 「来年もよろしくな」 「はい、こちらこそよろしくお願いしますね」
もう一度、空を見上げて聖夜の雪に手を伸ばす。 来年も、出来ればこの先の未来までもずっと。 親愛なる者が、幸せで、笑顔で過ごせるように。 そう、クリスマスに願いを込めて。
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