●『*ほわほわティーブレイク*』
ある雪の降る昼下がり、ベイメリアは両手に荷物を抱えながら帰途へとついていた。 手に持った荷物は全て、教会で配るためのプレゼント。紙袋一杯に詰め込まれた大量のプレゼントを抱えながら、うっすらと雪の積もった道を歩いてゆく。 すると、ほんの少し先の店から、見知った顔が出てきたのを見つけた。 「……あら? 和さま、奇遇ですね」 その声を聞いて、和はベイメリアの方に顔を向けた。 「あ、ベイメリアさん。わ〜、山盛りのプレゼントですね」 ベイメリアの大荷物を見て、感嘆の表情を浮かべる和。そう言う彼の手にも、荷物一杯の紙袋が抱えられていた。 「そうだ。せっかくお会い出来たのですし、どこかティールームで休息いたしませんか?」 そんなベイメリアの提案で、2人は近くの喫茶店でお茶をする事にしたのだった。 ベイメリアはハーブティーとスコーンを。 和はアプリコットティーとスコーンを注文し、ゆったりとティーブレイク。 しばしお茶を堪能してから、ベイメリアが和に尋ねた。 「和さまは、何をしておいでで?」 その質問に、和は少し恥ずかしそうにしながら答えた。 「結社の皆さんとパーティの買出しに来たのですが……ふと目に入ったモノにつられてお店に入って、うっかりはぐれてしまったようです」 そして、床に置いた紙袋の一つから、『ふと目に入ったモノ』を取り出した。 「これなんです、思わず買ってきてしまいました」 真っ白い表面に、がらんどうの目、綺麗に並んだ歯などが特徴的なそれは、骸骨の模型だった。 「フジモトさんみたいで素敵ですよね」 そう言いながら、にっこりと笑顔を浮かべて骸骨を見せる和。 ちなみに、フジモトというのはベイメリアの使役ゴーストである、スカルサムライの事である。本物の骸骨と似ていると表現するだけあって、模型は細部まで作りこまれていて中々迫力のある顔をしていた。 それを見たベイメリアは少しだけ驚いてから、笑みをこぼした。 それは、驚いたからでも、おかしかったからでもなく、家族とも言える使役ゴーストが褒められた事、それが嬉しかった笑顔だった。 「でも……こちらの方のほうが、いささかハンサムさんでいらっしゃいますよ?」 そんな事を談笑しながら、2人はほのぼのとしたお茶の時間を満喫したのだった。
骸骨の模型を見た他の客たちがざわめいたりもしたが、楽しく会話する2人には気にならなかったようである。
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