●『My Heart is Yours Forever』
「…………」 夜の静けさに包まれた、二人だけの世界。 色鮮やかなイルミネーションに彩られたクリスマスツリーの元、白き姫君と黒き執事は誓いを交わそうとしていた。 執事――我妻は彼女の名を冠した瑠璃色のリボンで装飾された小さな箱を取り出す。 「その……できれば左手の薬指にはめて貰いたいんだけど……」 静かに箱を開き、その中を彼女に見せる。 同じく彼女の名を冠した宝石――ラピスラズリがが埋め込まれた指輪が、月明かりに照らされ、輝いた。 「わがままで甘えっ子であずまに迷惑かけてばかりだけど……」 彼からのプレゼントと言葉は嬉しかった。 喜びで胸がいっぱいになり、溢れて瞳が潤むほどに。 「……それでも、いいの?」 しかし、こんな自分が彼と共に歩んで良いのだろうか……? もっと可愛い子や素敵な人はいっぱいいるから――そう思い、つい聞いてしまう。 (「でも……本当は、あずまを誰にも渡したくない」) 本心を隠し、ドキドキしながら彼の答えを待つ。 「瑠璃羽だから受け取って欲しいんです!」 だが返答はすぐに返ってきた。 我妻の心に迷いは無い。 彼女を置いて他に誰を選べば良いというのか……最初から彼女と共に歩もうと決めている。 「喜んでっ……!」 頷く瑠璃羽の瞳から、一滴の喜びが零れ落ちた。 彼の返答に迷いなど一つもなかった。 それは他の誰でもなく、最初から自分を選んでくれていたという証。 彼からのプロポーズに胸の中は幸せに包まれ、喜びが涙となって溢れだした。
「……どうぞ、手を」 彼女の手を取り、我妻は片膝を付いてゆっくりと薬指に指輪をはめていく。 繊細な指が少しでも傷付かないよう、慎重に……。 そして、彼女の手の甲に静かに口付けをする。 ――永遠の愛を誓って。 「……ありがとう」 瑠璃羽もまた、彼に甘い口付けをし永遠の愛を誓う。 最早、互いに誓いを交わした二人の愛を阻むものは何も無い。 瑠璃羽と我妻、二人の道はこれからも共にあるだろう。 月明かりとクリスマスの祝福が見守る中……。 今、一つの愛がここに結ばれた。
| |