●『星空散歩』
前日までの雨が嘘のように晴れ渡り、無数の星が夜空を飾る。 それは神様からのクリスマスプレゼントであるかのごとき、言葉では言い表せない神秘的な美しさを見せている。 そんな夜空の下、イルミネートされた街路樹に挟まれた通りを歩く二人の姿がある。 「凄かったね〜」 「ほんまどす」 クリスマスデートで街へと繰り出した、ひかると棘だった。 そんな二人を出迎えたのは、色とりどりにイルミネートされたクリスマスツリーと、華やかに飾った商店街であった。 色々なお店を回ってショッピングを楽しみ、仲間へのお土産も購入。 満足した二人が帰ろうかと言う頃には、既に月が昇っていた。 「あれがオリオン座ね」 「せやったら、その右側におますのはおうし座おすなぁ」 前日までの雨のおかげか、星がいつもよりはっきりと見える。 暫くの間二人で星座の名前を交代で言い合っていたが、それも自然と消え、また静かに歩く二人。 暫く後に口を開いたのは棘であった。 「そういえば、ひかるはんの受験、もうすぐおしたなぁ。おきばりなはれ?」 「うん」 あくまでも笑顔で言う棘。 それは別れを意味するものではないから。 好きな人が夢を掴むためにがんばるのだから、自分にできるのは精一杯応援する事。 むろん寂しくないと言えばうそである。 今までのようにいつでも会える訳ではないが、それは別れを意味するものではない。 それを理解しているがゆえの棘の笑顔である。 いまお互いが握り締めている手のぬくもりは、絶対に消えないから。 お互いにそれを理解しているので、ひかるからの返事にも一切の影は無い。 恋愛には不器用な二人だが、だからこそ真剣にお互いを想い合っている。 「さ、寒くなってきたし早く帰ろ!」 「そうどすな」 会えなくなるのなら、今のうちに思い出を一杯作っておけばいい。 寂しくなったら、それを思い出して我慢する。 そして、また会えたときに新しい思い出を作っていけばいい。 「シュトーレンたのしみだね」 「いったいどないな味おすやろ?」 「ちゃんとプレゼントも準備してあるんだからね」 満天の星空の下を歩く二人は、まちがいなく幸せであった。
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