華都・巴 & 央寺・セツナ

●『現代人のクリスマス事情』

 はい、そんなわけで──。
 両手をぱしんと合わせ誰に向かってか、心の中で説明を始めた巴。
 社会人目前の巴お兄さんが、よいこの皆にクリスマスプレゼントを渡してやろうと思い立ちました。
 なのでこのさっむい中、サンタの扮装で夜の街に繰り出す事になりました。
「と言うわけで、ハナタクロース様が良い子の元にプレゼントを届けにやってきたぜ! さぁ苦しゅうないぞ、ちこうよれ!」
 今、セツナの目の前には、手を大きく広げウェルカムな様子の怪しいサンタ風味の男。
 勿論、近くに寄ってはいけないオーラが溢れていた。
 セツナは、眉間にしわを寄せ呟く。
「お……アホが来たよアホが」
 そして、笑顔を作るとわざとらしく声を弾ませた。
「わーいサンタさん! プレゼントくれるんだ」
 そう言いながら、頑丈な凶器になりうる物を引きずって近寄る。
 視線が凍りつく巴を、それを担ぎ上げながらセツナが笑いかけた。
「峰打ちで済ますから安心なさって♪」
「いや……全然安心できません。それ峰ありません……」
 それすなわち金属バット。使い方をあからさまに間違えたスポーツ用具。
 首を激しく振り、後ずさる巴。
 次の瞬間、まるで韋駄天のごとく俊敏な動きでセツナは飛び出した。
 ここから先は、地獄絵図。阿鼻叫喚。空前絶後。
「ちょ……おま!! ぎゃぁぁあああ!」
 ぶっ倒れた巴の上に、どかりと馬乗りになるセツナ。
 勝ち誇った笑みを浮かべると、巴の懐から財布を抜き取る。
 セツナは完全に追い剥ぎと化し、財布を弄びながら、いたずらっぽく舌を出した。
「何買おうかし? プレゼントありがとね」
「さ……財布あげるなんて一言も……ガクッ」
 力尽きた巴。
 財布の中身を確かめながら、セツナはこの世の全てに感謝する。
「いやー。いいプレゼント貰っちゃったね! クリスマスってロマンチック!」
 今宵はホワイトクリスマス。
 クリスマスの魔法で、金属バットだってロマンチックだ。きっと。
 両手をぱしんと合わせて、セツナが聖夜を締める。
「こうして二人のクリスマスは過ぎて行くのでした。おわりぃ!」



イラストレーター名:土方