シオン・ミカヅキ & 切札・正義

●『セイント・ホワイト・ラブ』

「それじゃあ、約束だよ」
 シオンが言うと「りょーかい」と正義は笑う。
 ――約束をした。

 クリスマス・イブの夜。
 見事に飾り付けられ、ライトアップされたツリーがある公園で正義は一人を待っていた。
 クリスマスということ……お互い時間が取れなかったこともあり、久々のデートだということも相まって、正義はカッチリとした服装で決めていた。
(「そろそろ来るかな……っと」)
 約束した待ち合わせ場所は、大きなツリーの下。
 正義は見るともなしに、辺りを見渡す。
 ……すると、視界に一人が飛び込んだ。
 茶色い髪をアップにした、細身の女の子。
「あ……」
 正義が呼び掛けるよりも早く、その細身の女の子がパッと表情を輝かせ、正義に向かって走り出してきた。
 「え?!」と声を上げながらも正義は体勢を整える。
 バフッ! と勢いよく正義の胸に飛び込んできたのは、いつもしないドレスアップをしたシオンだった。
「正義ーっ!!!」
 「キャホーッ!!」とかいう歓声までつけそうなシオンは、これ以上にない笑顔を浮かべる。
 シオンに抱きつかれた正義は少し驚きながらも、シオンをしっかりと抱きとめた。
 正義に抱きとめられたシオンは顔を上げて視線を合わせると、再び笑顔を浮かべた。正義の胸に軽く頭を押し付ける。
 腕の中のシオンの髪を正義はそっと撫でた。
 抱きつかれているだけではなく、正義は自らそんなシオンを抱き締める。 
「メリークリスマス、シオン」
 正義が耳元で囁くと、シオンは顔を上げた。
 ふわり、と笑みを浮かべる。
「メリークリスマス、正義」
 互いに抱き締めていた二人はゆっくりと――少しだけ名残惜しそうに体を離した。
 けれど、どちらから握った手は離さないまま。
「シオン、よく似合ってるぜ」
 正義がシオンのドレスアップ姿を褒めると「へへへっ」とシオンが笑った。
「正義は、カッコイイよ」
 正義の真似をするように、シオンも正義を称える。
 互いに笑顔を浮かべ、二人は歩き出した。

 ――二人のデートは、これからが本番だ。



イラストレーター名:ひお