●『〜絆〜 クリスマスの2人』
御生と水菜、二人の住む学生寮の宴会場では、恒例のクリスマスパーティが開かれていた。 会場はすっかり名物のミニスカサンタ祭りに沸いている。 ミニスカサンタが名物って何!? ……というのはとりあえず、置いておいて。 賑やかなパーティの喧騒の中、御生はにこにこ満面の笑みを浮かべて、水菜へとクリスマスプレゼントを手渡した。嬉しそうにその場で包みを開ける水菜。 クリスマスカラーの包みの中から出てきたのは、見紛うことなきサンタドレス。 自ら着るのならともかく、こんなものを女の子に着せようなんて。まあ普通なら、頬にもみじの跡が残っても文句は言えないところだろうが、そこは大好きな御生のため。例えどんなKYな行動だったとしても、御生が喜んでくれるのならと思うのが水菜の乙女心。 とはいえ……他の人の前で着るのはさすがに恥ずかしい。御生を自室へ誘う水菜なのだった。
「少し待っていてくださいね」 水菜は御生の為に緑茶を淹れてから、ふすまの向こうへ姿を消した。 まっすぐに垂らした艶やかな黒髪と、清楚な巫女服姿、今からミニスカサンタドレスに着替えるとは到底思えないが……そのギャップにわくわくする。可愛らしい水菜の姿に妄想を膨らませながら、ドキドキと一人静かに待つ御生。 一方、ふすま一枚挟んで着替える水菜も、もちろんドキドキ。 「これでは足が見えてしまいます……」 サイズはぴったり。けれど想像以上にスカート丈が短い。水菜以外が見れば寮の標準よりも十分長いのは一目瞭然なのだが……鏡を覗き込み、困惑しながらスカートの裾を引っ張ったりしてみる。しかし、それで丈が伸びるわけでもない。
「国立様?」 「はいっ」 ふすまの向こうから呼ばれ、御生は思わず居住まいを正す。 ゆっくり、開いたふすまの向こうから現れたのは……恥ずかしそうに真っ赤に頬を染め、スカートの裾を気にする水菜の姿だった。ケープ付きの可愛らしいサンタドレスに、何故か真っ赤なリボンでツインテールというおまけつき。 御生は瞳を輝かせ、思わず水菜に駆け寄った。 「素敵すぎますっ! 今日の水菜さんもとーっても可愛いですっ!」 嬉しそうに照れる水菜とキラキラと輝く御生の視線が見詰め合う。 どんなに可愛いだろうと妄想していた姿は全て消し飛んでしまい、目の前の、可愛らしい水菜の姿が御生の心を埋め尽くしていく。 なんだか急に恥ずかしくなって、先に視線を外したのは御生だった。 窓からふと外を見上げると、そこには冷たい空気の空が広がっている。 「あ、え、えぇと……なんか、雪降って来そうです」 そんな御生とは反対に、御生の笑顔に落ち着きを取り戻した水菜が穏やかな笑みを浮かべて言う。 「……大丈夫ですよ。御生様がいれば、私の心は温かいですから」 御生の手に自分の手を重ね、愛おしそうにそう、呟くのだった。
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