天城・星夜 & 武田・雪姫

●『二人の門出〜ここからの始まり〜』

 街はクリスマス一色。イルミネーションに彩られ、華やかな街角。その様子を喫茶店の窓から見ながら、星夜と雪姫は席に着いた。
「雪姫さん。今日のドレス、すごく綺麗だよ」
「あ……ありがとうございます、星夜さん」
 星夜の言葉に、雪姫は照れた様子で微笑む。今日、星夜に見せるために選んだドレスだったので、星夜に綺麗だと言ってもらえて嬉しかったのだ。その様子に星夜も穏やかに微笑んだ。
「俺は珈琲とケーキを。雪姫さんは?」
「では、わたくしは紅茶とケーキを」
 それぞれ注文して、プレゼント交換。互いに受け取ったプレゼントを見た後、見つめあい、微笑みあう。
「今年もこの日を迎えられたね。雪姫さん」
「この時期は何度来ても心が温まります。大切な人と静かにすごせるのですから」
 二人の間には、これ以上の言葉はいらない。こうして微笑みあうだけで、心が通じ合う。今の二人には、そんな雰囲気があるのだ。
 暫くして運ばれてきたケーキを食べながら、二人は静かで穏やかな時間を過ごした。

 喫茶店を出て、二人で歩いていく。向かう先にあるのは、美しく飾られたクリスマスツリー。
「これからもずっと、この夜を迎えたいね」
「ええ、そうですね。来年も、その先も……」
 二人並んで、クリスマスツリーを見上げて。来年、再来年、そしてその先のこの日を思う。ずっとずっと、二人でこうしてクリスマスを迎えられれば……。
「卒業したら、迎えに行くよ」
 ふいに、星夜が雪姫を見つめてそう言う。雪姫は突然のことに驚いたが……頬を朱に染めて、こくりと頷いた。その様子が愛おしくて……星夜は、そっと雪姫を抱き寄せた。そして、キスをして、真剣な表情を見せる。
「俺が、20になったら……結婚しよう」
「……えっ……?」
 雪姫は、星夜を見上げる。その表情は、不安げだ。その表情を見て、星夜は優しく笑った。
「俺が護るから。ずっと、一緒だよ」
 それを聞いて、雪姫の顔から不安が消えた。次に浮かんだ表情は、笑顔。しかし、涙が浮かんでいる。それは、喜びの涙なのだろう。星夜はそっと、その涙を指でぬぐい、彼女をしっかりと抱きしめた。
「約束……守るから」
 その言葉に、雪姫は返事の代わりにそっと星夜を抱きしめ返すのだった。

 帰り道。二人寄り添って歩いていく。少しだけ寒そうな様子を見せる雪姫に、星夜はそっとコートをかけた。
「あ、ありがとうございます。でも……」
「俺は大丈夫だ」
 そうして、微笑みあい、再び歩いていく。

 これからずっと、二人で一緒に、寄り添って歩いていく。この日から始まる、二人の物語……。



イラストレーター名:吉野るん