●『はじめてのクリスマス』
マーガレットと凌が付き合い始めて、初めてのクリスマス。せっかくのクリスマスだから居候さんにはちょっとだけ席を外してもらって、凌とマーガレット、ふたりきりのクリスマスパーティが始まろうとしていた。料理とケーキは、マーガレットがキッチンに立って作ってくれるという。マーガレットが料理をしている傍で作業を見ていると、凌はいつになくわくわくとしてしまった。可愛い彼女が、自分のために料理をしてくれている……。 「手伝おうか」 見ているだけでは落ち着かず、せっかくだから彼女の手伝いをしよう、とそわそわ伸ばした手も、慣れないためか少しだけ邪魔をしている様になってしまう。 「ありがとうございます、では……」 それでもマーガレットは嫌な顔一つせず、どうにか手伝おうとする凌に向かって微笑みかけながら作業を進めるのだった。 凌の暮らす小さなアパートの一室……そこは最低限の生活用品しか無いくらいの部屋だったけれど、今日は不器用なりに頑張ってクリスマスらしい飾り付けをして、小さいけれどクリスマスツリーも用意した。ふたりで協力して作った料理を運んでテーブルに並べ、いただきますもそこそこにして凌は真っ先に料理を口に運ぶ。 「生きてて良かった……」 マーガレットの料理を口にした凌が、感激したように呟く。 「そんなに喜んでもらえて嬉しいです」 オーバーな反応をする凌に、マーガレットも照れたように笑った。頑張って作った料理を美味しい、美味しいと食べてくれる凌に、マーガレットの心もほんのりと暖かくなったような気がした。 「ずっと一緒にいような、マーガレット」 唐突にそういって明るい笑みを零す凌に、マーガレットもにっこりと微笑を返した。そして顔を見合わせて、声をそろえて一緒に祝う。 「メリークリスマス!」 初めてのクリスマス。それは、ふたりだけの忘れられない素敵な思い出となって凌とマーガレットの心に刻まれることになったのだった。
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