神垣・奏夜 & 椿・アレン

●『きみと一緒に』

 今日は、クリスマス。皆、クリスマスの雰囲気に浮かれているようで、楽しそうにしている。友達と過ごす者や、恋人と過ごす者。それぞれ、大切な者と過ごすのだろう。
「今日は楽しいクリスマス〜……ってか。皆楽しそうで何よりだぜ」
 教室の、窓際の席。そこに、奏夜は一人でいた。窓の外で、楽しそうにしている者達を眺め……穏やかに笑い、傍に置いてあるギターケースに手を伸ばす。
「こんな時には、一人静かに……と」
 一人で演奏しよう。そう思い、ギターを取り出す。その時、ふと出入り口に目をやると、一人の少女……アレンが立っているのを見つけた。アレンは奏夜の姿を見て、嬉しそうに笑っている。
「アレンか。せっかくのクリスマスなのに、外で遊ばないのか? 外、皆楽しそうだぞ。アレンの友達もいるんじゃないか?」
「ううん。……こっちにいるほうがいいの」
 アレンは、奏夜の傍まで歩いていく。そして、奏夜の後ろから手を伸ばして、甘えるようにくっついた。
「外で友達と騒ぐより、奏ちゃんの傍にいたいな。だから……ね。ギター、聞かせて?」
 穏やかに微笑むアレンに、奏夜も笑みを返し……ギターを構える。
「しょうがないな。んじゃ、演奏してやるよ。だからさ、アレンは歌えよ。曲は……そうだな、ジングルベルだ!」
「うん!」
 そして、鳴り始めるギターの音。それに合わさるソプラノの美しい歌声。その二つの音は、美しいハーモニーを教室内に響かせる。
「……あたし、奏ちゃんのギター好きだよ。奏ちゃんのギターに合わせて歌えるなんて……奏ちゃんを探しに来て、良かったぁ……」
 曲が終わり、アレンは本当に幸せそうに笑う。それを見て奏夜は微笑み、再び演奏を始める。
「じゃ、アンコールだ。もう一回、アレンの歌聞かせろよ」

 二人きりのクリスマスリサイタルは、しばらく続く。その間、教室内には、優しい音色が響いていた。
 一人では作れない、温かな音色。二人でだから、一緒だから作れる。そんな、幸せの紡ぐ音色……。



イラストレーター名:ゆめじ