●『仲良し☆兄妹 クリスマス・ツインズ』
「寒いです……」 十二月二十四日、クリスマスイブ。染み入るような寒気の中、颯と楓の兄妹は商店街を歩いていた。 「なら、このマフラーとか、どうです? あったかそうです〜♪ 色もリボンに合ったのがあるです♪」 颯が服飾店の店先に並べられていたマフラーの一つを手に取る。そして楓の首に巻き付けていく。 「ほら、よく似合ってるです〜♪」 「ぅ……」 顔を真っ赤に染める楓。そんな様子に全く気づかず、颯は自分の分とあわせて、会計を済ませてしまう。 「これでお揃いです〜♪」 嬉しそうに笑いかける颯に、楓はただただ頷くことしかできなかった。
今日商店街に来た目的は二つある。そのうちの一つが晩ご飯の準備だ。せっかくのクリスマスイブだから、お祝いのための豪華な晩ご飯をつくろうというのだ。 「これ。食べきれますかねぇ」 二人が悩んでいるのは、肉屋のショーケースに入っている鶏の丸焼きを買うかどうかだ。クリスマスらしいメインディッシュではあるのだが、いかんせん二人で食べるには量が多い。 「あぅ……ケーキもあるし……」 颯は行く前にケーキのスポンジを焼いてきた。気合いの入った力作で、五号の型に入れて焼いてある。これだけでも、かなりの分量である。その上で鶏を丸々一羽食べるのは、確かに厳しいかもしれない。 じっと、真剣にショーケースの中を見つめる二人。店主のおじさんが微笑ましそうに見つめている。 「よし。じゃあ、こっちのローストチキンでいいですか〜♪」 どうやら決まったようだ。おじさんに包んでもらって店を後にする。
通りを抜けるとちょっとした広場のような場所に出た。 そこが二つ目の目的の場所だ。 そこには八メートルほどの巨大なクリスマスツリーに色とりどりの電飾がきらびやかに施されていた。 街で一番大きなモミの木が、クリスマスの期間中だけライトアップされるのだ。 「綺麗です〜♪」 颯はニコニコととても嬉しそうにツリーを見つめている。傍らの楓も言葉にこそしないが、目を輝かせている。 ギュッと手を握りしめる、どちらからということもなく。 「今年も楓とクリスマスを祝うことができて良かったです〜♪」 「うん……」 コクコクと頷く楓。 どれくらいの間、手を握り合っていたのだろうか。冷たい空気に体が凍えてきた。 「そろそろ帰りますか。お祝いもしたいですし♪」 「……」 寂しげな表情。名残惜しいのはどちらも同じだ。その迷いを断ち切るために、言葉を続ける。 「今日はとっても楽しかったです♪ 付き合ってくれてありがとう」 楓がその言葉にどんな顔を返してくれたかは、あえて見ないことにした。 こうして、二人は家路についた。かけがえのない家族と過ごす、暖かい家に帰るために。
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