●『炬燵の魔力が結ぶ朝』
「ん……寝ちゃってたか……」 カーテンの隙間から差し込んだ日の光に目を覚ました学は、寝ぼけ眼で周囲を確認する。 どうやら、クリスマスパーティで騒いだ後にそのままコタツで眠ってしまっていたらしい。 隣には、体をくっつけるようにして気持ちよさそうに眠りこけている凪の姿がある。 先に睡魔に敗北した学の後に付き合ったのか――単純に、いつも一緒にいたいとかそういう理由なのだろう。 少女は学の腕を枕にしていたようで、左腕には凪の頭のあとが、かすかな痺れとして残っている。 「ふむ。凪ー?」 「にゃ……」 恋人の体の残滓を左腕で感じつつ小さくかける呼びかけに、眠り姫は子猫みたいな寝言を返してくる。 (「ふむ……どうするかな」) どうやって起こそうか。 せっかくなのだから、何かこう、ドラマチックに。 あるいはロマンチックに。 猫のように可愛らしい恋人の目覚めに、たくさんの驚きと喜びを与えてやりたい。 というか、自分がやりたい。 「――よし」 ようやく考えが纏まったらしい。 学は、相変わらずぐっすり眠り込んでいる凪を覗き込むように顔を近づけ。 ゆっくりと唇を重ねる。 「……何かにゃあ」 口づけの感触で目を覚ましたのか、凪は眠そうに目をしばたたかせながら顔を起こす。 「おはようさん、凪」 「……おはよなんだよ〜」 大好きな学の顔を認識した瞬間に、一気に眠気が吹き飛んだらしい。 不意打ちに顔を真っ赤にしつつも嬉しそうに、微笑む学に満面の笑顔で朝の挨拶をする。 「いい天気だ。早く着替えて出かけようぜ」 「今日も学とデートにゴーなのだ〜♪ 」 カーテンを開けて振り返った学に勢いよく跳びついた凪は、そのままゴロゴロと気持ち良さそうにのどを鳴らして頭を擦りつける。 可愛らしい少女の猫のような仕草に目を細めて、優しい手つきで頭を撫でてやる学。 真冬の寒さを春に変えてしまうほどに『アツアツ』な二人の朝は、こうしていつもと同じようにラブラブに過ぎていくのだった。
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