●『どっちがプレゼント?』
ピンポーン。 玄関のベルを押し、わくわくしながら待つ。 今日は、年に一度の大事な日。だれもがわくわくする、とってもハッピーな日。 ましてや相思相愛なら、そのわくわくは倍増し、ダブル、大盛りかつてんこ盛り。 誰もが好きな相手に、プレゼントを贈りたくなる日である。彼氏彼女に、贈られるプレゼント。互いに愛し愛される者同士、その喜ぶ顔を見たくて、贈り物を贈りあう。 それは、和沙も同じ。好きな相手の喜ぶ顔を見たくて、彼女もまた用意していた。 「えへへ……」 愛しい英二の顔を想像し、今から顔が緩んでしょうがない。 「ボクのプレゼント。喜んで、くれるかな……?」 扉の向こうから、ごそごそという物音、そしてぶつぶつ言う声が聞こえてきた。 「……ったく、こんな時間に誰やろ?」 扉が開き、英二が姿を現す。半分ねぼけたような顔をしていたが、 「なんや、和沙ちゃんやないか。どないしたん……って?」 すぐに彼の表情は、ぽかーんとしたそれに変わった。 「メリークリスマス! 英二くん!」 恋人をぽかーんとさせた当の本人は、ちょっと得意そうに問いかけ、ちょっと恥ずかしそうに頬を染める。 英二の家。その玄関先に現れた和沙は、今宵にふさわしい姿をしていたのだ。 彼女の身体を包んでいるのは、赤いサンタクロースの衣装。ただし、女性向けにデザインされたそれ。まるで和沙自身が、赤い包装紙に包まれているかのよう。 「えへへ、びっくりした?」 「……」 英二は、そのまま固まり動かない。 「はい、クリスマスプレゼント!」 「……」 後ろ手に持っていたプレゼントの包みを、和沙は英二へ差し出した。とっておきのスマイルを添えて。 「……英二くん?」 「……って、プレゼント? わいに?」 ようやくそこで、英二が反応した。 「うんっ……きゃっ!」 「プレゼントおおきに、サンタさん!」 和沙が悲鳴を上げるのも当然。恋人とはいえ、いきなりお姫様抱っこされたら誰でも驚くもの。 「あ、あわわ?」 「ほな早速、お部屋の方にお持ち帰りに……」 そのまま、英二は和沙そのものを抱きかかえて部屋へと向かった。どうやら差し出されたプレゼントより、和沙本人しか眼に入ってなかったっぽい。 「って、ボクも丸ごとプレゼント扱い?」 ようやく気づいたが、もう遅かった。玄関の扉は閉まり、英二の寝室に運ばれた彼女は、そのベッドの上にとさっ……と、置かれてしまった。 「それじゃ遠慮なく、プレゼント受け取らせてもらうな? おおきに!」 嬉しそうな英二の顔が、和沙の眼に映る。 「こ、ここまでボクは、あげるつもりじゃなかったのに……」 でも、英二に抱きしめられ、くちづけを受けていくうち……。 「……優しく、してね?」 真っ赤になりつつ、英二へとプレゼントの包み二つを開いた。ひとつは、自分が用意したもの。 そして、もうひとつは……。
「あー! もう! その後のことは内緒!」
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