白貫・弼 & 一条・隼人

●『プレゼント交換』

 クリスマスイブの夜、隼人と弼は、弼の部屋の中で2人きりで寄り添い、お互いに何か言葉をかわすわけでもなく、ただ、今この場所にある幸せな時間をのんびり過ごしていた。ふと、カチカチと規則的に動く時計の音が気になって、弼は時計を見上げる。まだ時間はある……けれども、もういい頃合だろうか。そう考えた弼は、立ち上がり、
「そろそろプレゼント交換する?」
 そう言いながら、机の上においておいたきれいな袋を手に取り、隼人の前に突き出しながら微笑む。おろしたてのスーツでびしっと決めている隼人も立ち上がり、持ってきた袋を手にとって弼に渡し、弼のプレゼントを受け取る。お互いに目を合わせて、それぞれのプレゼントの袋をゆっくりと開く。
「これは……マントかな? ありがとう♪」
 中身を確認した後、弼は隼人に目線を戻して微笑む。隼人も弼が丁寧に編んだマフラーを確認して、こちらこそありがとう。と、微笑み返して袋を閉じようとする。
「……ねぇ?」
 唐突に、弼は隼人を上目遣いで見て、言葉を続ける。
「両方とも衣類だし、今ここでお互いに付け合ってみない?」
 隼人はその提案に戸惑うが、弼の着ている肩出しのセーターは、部屋の中とはいえ、この季節には少し寒そうに見えた。
「わかった」
 と、隼人は返事をすると、プレゼントの袋を再び交換し、漆黒のマントを取り出して、弼の肩にやさしくかける。マントが弼にかかる瞬間、ぴくっ。と弼の肩が震えるのを感じた。
「じゃ、次は私ね」
 そう言うと、弼はマフラーを取り出して、隼人の首元に巻き始める。そのマフラーが、1人で巻くには少し……いや、かなり長いことに、マフラーを丁寧に巻きつける弼に目を奪われていた隼人は気づいていなかった。
「できたっ……それから、寒いから……私も巻かせてね♪」
 隼人はその言葉を瞬時に理解できなかったが、弼が少し背伸びをして、マフラーの反対側を首に巻くためにくるっ、くるっとゆっくり回るのを見て理解し、少しかがんで弼の背にあわせる。しかし、弼が楽しそうに回るたびに、その顔が近づいてくることに気づいた隼人は、
「にゃっ」
 と、思わず猫のような声が出てしまう。
「ふふ♪」
 隼人ったら、かわいい声ね。と思いながら、弼は隼人の頬にキスをした。
「弼……」
 にこにこと満足げにしている弼を見て、隼人はすばやく弼の体を軽く抱きしめ、その唇を奪おうとする。弼は強引な隼人にちょっと抵抗しようとしたが、隼人の表情、意思に押されて、身を任せた。
 時計の音はもう聞こえない。この時間が永遠と思われるほどに、2人は幸せを分かち合っていた。



イラストレーター名:綾菜