●『ぬくもりのDistance』
今日は、この学校でもパーティーをしていたりしてにぎやかなわけなのだが……2人は、あえて屋上に出ていた。 きっかけは、先ほどのこと。気がつけば、隣で星を眺めていたのだ。そこで、以前『いつか一緒に星を見よう』と約束していたことを思い出したのだ。 「どうせなら、屋上に行くか」 「そうですね、行きましょうか」 そうして、2人で屋上に移動したのだった。今は、2人並んで星を眺めている。 「賑やかなのも嫌いじゃないが、俺は東雲さんと居られれば幸せだな」 惣一郎が、ふいにそんなことを言う。ことはは、チラっと惣一郎を見た後、再び星を見上げる。 「こうして2人でゆっくりしているほうが、私は好きです」 そう、ことはがぽつりと呟くと、惣一郎がことはの方を見る。 「何か言ったか?」 「いえ、なんでもないですよ」 そして、夜空に視線を戻す。遠くに見えるパーティー会場やきらびやかに飾り付けられたクリスマスツリーに負けないくらい、綺麗な星空。それを見ながら……ふと、ことはは思い出す。 「仙堂さん。屈んでもらえませんか?」 鞄の中にしまっていた、惣一郎へのプレゼントであるマフラー。惣一郎の身長では、ことはがマフラーを巻くには少し屈んでもらわないと難しいのだ。 「なんだ? マフラー、巻いてくれるのか?」 マフラーを見て、素直に屈む。その首に、ことははマフラーを巻いていく。 「受験生は風邪なんかひいちゃ駄目ですから」 「そういや、受験生だったな。まあ、何とかは風邪ひかないだろうし、ひいたら看病してもらおうかね」 ことはの心配に、軽口を返す惣一郎。そのことに、ことはは思わず笑う。 「でも、風邪は駄目です」 「厳しいな。ひく時はひくだろ」 「その時は、おかゆでも作りに行きますよ」 そんなことを話しているうちに、マフラーを巻き終わる。 「うん。やっぱりこの色、似合いますね」 ことはは満足そうに笑う。惣一郎も、つられて嬉しそうに微笑む。 「ありがとな。機会があれば服も選んでもらいたいところだな」 「受験が終わったら、一緒に買い物に行くのも良いですね」 「受験……な。まあ、頑張るか。このマフラーがあれば、勉強中も暖かいだろ」 「そうですね。頑張ってくださいね、応援していますから」 笑いあい、再び見上げる星空。 そこに流れる流れ星に……2人は、何を願ったのだろうか。その願いは、叶うのだろうか……。
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