●『二人の逢瀬』
サンタクロース風の上着と帽子を用意して、龍はスペルヴィアの元へと向かっていた。 勿論、クリスマスをふたりで祝う為。大切な絆を結んだ彼女と、ふたりで。
そして当のスペルヴィアはというと、事前に龍から渡されていた衣装を手に……ふるふると震えていた。 (「こ、こんなもの……着れるかぁぁああぁあ!!?」) 見えそうで見えない絶妙な丈のミニスカートワンピース。赤色で、裾や袖口は白いボア生地で覆われている。どこからどうみても、サンタクロースをモチーフにしたパーティ向けのそれだった。 正直言ってとてつもなく恥ずかしい。『剣』の名を冠する彼女にとって、こういった女性らしい……というか、かわいらしい服装は大変な強敵なのである。しかし信頼を寄せる相手からの贈り物とあっては、着ないわけにもいかない。 そうこうしているうちに時計の針は無情にも時を刻み、約束の時間が近づいてくる。 (「くっ……もうどうにでもなれ!!」) 覚悟を決めてからの彼女の行動は早い。ぱぱっと今まで着ていた服を脱ぎ、そして赤いワンピースに袖を通す。ご丁寧に帽子までセットされていたので、それも頭に乗せて鏡の前に立ってみた。 (「に……似合わん…………」) がくりと肩を落とす。が、ピンポーンとチャイムの音が鳴ったので慌ててその格好のまま玄関先へ。 ドアを開ければ、赤い色に白いボア、サンタクロースの上着を羽織り、これまた同じく帽子を被った龍の姿があった。 「やぁ、着てくれたんだな、それ」 一瞬、ほんの一瞬忘れていたのに、その言葉でスペルヴィアは現実に引き戻される。 「こっ、これは……その!!」 一人で着ていただけでも相当恥ずかしかったのに、別の誰かに見られているともなれば、みるみる顔が紅色に染まっていってしまう。 「い、いや、せっかくの贈り物だ、着ないわけにも、いかないだろう?」 おろおろしながらスカートのすそを引っ張るスペルヴィアに、龍はほんのりと苦笑する。 「似合ってるから、そんな心配しなくても大丈夫」 龍の手がそっとスペルヴィアの腰に伸びて、スペルヴィアの身体はあっという間に抱き寄せられてしまう。 そして重ねられる唇。 最初は身体をこわばらせていたスペルヴィアも、少しずつ身体の力が抜けてゆく。 ゆっくりと目を閉じて、龍との甘いひとときを味わった。
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