●『乙女達の決意』
クリスマスムード全開の街を、連れ立って歩く歌戀と御守。 去年までは同じ男の子と付き合うライバル同士だった二人。けれど今は、二人とも彼とはすっぱり別れて、前の通りの気兼ねのない仲良しな大親友に戻っている。……だから、例え男の子の居ないクリスマスだって寂しくなんかない! と、言うワケで遊びに出たのである。 テンション上げて何枚もプリクラを撮り、美味しーいパフェに舌鼓を打つ。 乙女にとって特別な日を満喫する二人。 けれど気になるのは、仲良さそうなカップルの存在。どこもかしこもカップルだらけ。カフェなんかでは、隣の席で楽しそうに「はい、あーん」とかハートマーク付きでやってるから余計に切なくなる。 だって、二人とも一緒に過ごせる異性は居ないから。 定番のクリスマスソングを歌う路上ライブが聞こえてくる大きなツリーの下で、歌戀はついに声を上げた。 「どうしてパーフェクトな私に彼氏がいないのか納得できませんわ!」 (「カレンは素敵な女の子だけど、完璧じゃないんじゃ……?」) 漠然とそう思いつつ視線はしっかり歌戀の胸元に行ってしまい、御守は慌てて目を反らす。それには気付かずに、歌戀は勢い込んで続けた。 「御守! 次はショッピングですわよ!」 「え? ちょ、ちょっと……」 歌戀に手を引っ張られて慌てる御守。けれど彼女の勢いに飲まれて付いていくことしか出来ないのであった。
気がつくと、手には大量の買い物袋。完全にヤケ買いだ。 公園のベンチに腰を下ろして、はふぅ、と二人揃って溜め息をつく。 やはりこの公園も、たくさんのカップルがデートを楽しんでいた。 カップル達を眺めながら、身体を温めるために買った肉まんをもくもくと食べる。 「……やっぱり、ちょっと寂しいな……」 御守の唇から漏れる何気ない言葉。けれど歌戀は聞き逃さずに立ち上がって、御守の顔を真っ直ぐに覗き込んだ。 「なに言ってるんですの! そんなことじゃ私のライバル失格ですわ!」 「……ん。そうねっ♪ ……カレン、ありがと」 歌戀の激励に微笑みを浮かべる御守。恋愛は苦手で奥手だけれど、歌戀が励まして引っ張って行ってくれるのなら頑張れそうな気がする。 歌戀は御守の笑みに満足そうに頷いて、ベンチに戻った。 「私、来年こそは私の王子様と過ごしますわ!」 「じゃ、来年は4人でクリスマスねっ」 ぐぐっと両手に拳を握り締める二人。 来年はもっともっと楽しいクリスマスを過ごすことを夜空に誓うのであった。
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