●『聖夜のイケナイひととき』
聖夜に繰り広げられるのは恋人同士の甘い時間……ばかりではない。 友人同士の楽しいひと時、仲間同士の賑やかな時間――と、人それぞれだ。 そのうちの一つ……フカフカの絨毯が敷き詰められたホテルの一室で、二人の女性がゆったりとした時間を過ごしていた。 一方は紫の長い髪の、豊満な女性。 もう一方は黒い髪の、色白な女性。 レースのカーテンの向こう……眼下には夜景がひろがる。 僅かに灯りの落とされた部屋の中、クスクスと密やかな笑い声が響いていた。 「やん、お姉さまったら♪ ……あん♪」 「可愛いわよ、氷♪」 くすぐったがる氷の声に応じるのは、妖艶と言える夜宵の声だった。 クスクスと、密やかな笑い声が絶えることはない。 彼女らは『甘い』と言える声を出しているが――別に恋人同士ではなかった。 限りなく『怪しげ』ではあるが、二人は普通の仲良し同士である。
適度に固いベッドの上にはいくつものクッションが用意されている。固いベットと反してクッションは柔らかく、氷は背中を預けていた。 そんな氷の上に、夜宵が少し圧し掛かる。 「はい、氷」 夜宵は唇にチョコレートを挟み、そのチョコレートを氷へと示す。 一口チョコレートを示された氷はちょっとばかり驚いた。 夜宵の紫の長い髪が、サラサラと彼女の豊満な胸元を滑り、圧し掛かる夜宵の手が氷に触れる。夜宵の指先が、氷を優しく撫でた。 その気がなくても、セクシーな美女である夜宵の色っぽさに氷の頬は上気する。 近さ、温もり、香り……と鼓動が勝手に早まる条件が揃うが、氷は夜宵の言葉に応じ、少しばかり口を開けた。 開いた淡い色の唇を認めると、「イイ子ね」と言わんばかりに夜宵がつややかであでやかな笑みを浮かべる。 口移しで、夜宵は氷にチョコレートを渡した。 カプ、と氷はチョコレートを受け取り、パクリと口内へとおさめる。 夜宵はそんな氷の様子に更に笑みを深めた。 「可愛いわよ、氷♪」 夜宵は同じ言葉を繰り返す。チュ、と軽く氷の頬にキスをした。 夜宵のキスに「お姉さま……♪」と氷が頬を赤く染める。 色白の氷の変化に夜宵は常に誘うような瞳に楽しげな光を宿らせる。 「可愛いわ♪」 もう一度呟いて、もう一方の頬にキスを落とした。
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