●『White Christmas−日頃の感謝と親愛を込めて−』
「お、偶然だな」 「あら、偶然ね」 夜の街での買い物中、意図したわけではなくばったり遭遇した統夜と狭霧は、顔を合わせると同じタイミングでそう口にした。ここで出くわしたのも何かの縁である。統夜と狭霧の二人は、そのまま色々と他愛ないような事を話しこみながら足の向くままに街を歩いて行く。 やがて、彼らはクリスマスツリーのもとへとたどり着いた。街に飾られている中でもひときわ大きなクリスマスツリーは、色とりどりの電飾に彩られていた。思わず二人の足もそのツリーの前で止まり、そのまま並んで暫くの間そのツリーの姿を眺めていた。 「あ、そういえばさっきわたし、あなたへのクリスマスプレゼント買ってきたところだったのよ」 眺めるうちに不意にプレゼントの存在を思い出し、狭霧がそう言うと、 「そうか、俺もなんだ。狭霧へのプレゼント、買ってきたところだったんだ」 統夜もそう言ってうなづく。 「本当に偶然よね」 折角だから、ということで後々に渡す予定であったプレゼントは、今この場で渡される事になった。片やシックに、片や可愛らしく包装されたプレゼントはお互いに交換された。 「ねぇ、玖堂君。今ここで開けてみてもいいかしら?」 中身が気になるらしく、プレゼントをじっとにらみながら、狭霧が尋ねる。 「ああ、勿論構わない。それじゃあ、俺も開けてみていいか?」 となれば、統夜も開けてみたくなる。いいわよ、と統夜は狭霧の了承も得た。 そして、二人揃って互いの贈り物の封を開けた。 狭霧から統夜へのプレゼントの中身はと言うと――ジュラルミンを削りだしたフレームに高性能なLEDのついた、彼女が彼に抱くイメージを持ったフラッシュライト。 統夜から狭霧へのプレゼントの中身はと言えば――透き通るようなクリスタルの淡紅色が美しいルージュ。 あまりの互いのプレゼントの内容の共通点のなさに、思わず顔を見合わせた統夜と狭霧はついくすりと笑ってしまった。そんな中。 ――はらり。 「あ……、雪……」 互いが互いの贈り物を大事に受け取ると、彼らの目の前を白い真綿のような雪が舞った。空を見上げてみれば、イルミネーションの鮮やかなクリスマスツリーと街並み……、虚空から舞い降りる白い雪。それら光が神秘的な光景を統夜と狭霧に見せた。二人は光と雪のコラボレーションに見とれ、暫くそのまま空を見つめ続けたのだった。
| |