●『雪降る街の温かな囁き』
キラキラと光るイルミネーションが街を照らす。 曇天の空からは、純白の雪がふわふわと落ちてきて、イルミネーションの光を吸い込み輝いている。夜だというのに、この街はとても華やかだった。 今日はクリスマス。商店街を歩く人々も、どこか浮き浮き足立っているような印象を受ける。 その商店街から、少し離れた所にある人気の少ない公園。そこに紗枝はいた。 「クッリスマスー、クッリスマスー♪」 よほどクリスマスが楽しみなのか、楽しそうに鼻歌を歌っている。 (「クリスマスは毎年楽しみだけど今年は青葉お兄ちゃんと二人きりのクリスマスかぁ……えへへ、何かちょっと恥ずかしいな。せっかくだしサンタの格好してみたけど……青葉お兄ちゃん、喜んでくれるかなぁ?」) そわそわと、紗枝は落ち着かない様子で、呼び出した青葉の登場をいまかいまかと待ち構えていた。 しばらくの間待っていると、公園の入り口に青葉が姿を現した。 「あ! 青葉お兄ちゃん、やっほー!」 紗枝は青葉を見つけると、一目散に駆け寄った。青葉も紗枝に気づいたようだ、紗枝の格好を見て、びっくりしたような表情を浮かべている。 紗枝は青葉の目の前で急停止すると、衣装を見せ付けるためにくるりと回ってみせた。 「ね、見てみてー、この格好似合うー?」 「すごいっ! サンタさんだ! うん。とっても似合ってる、可愛らしいね!」 青葉はあふれるような笑みを浮かべて、紗枝を褒めた。その言葉に、紗枝は「えへへ〜」と顔を赤らめて照れている。そして誇らしげに、踊るような優雅さで何度もくるくると回りはじめた。 そんな紗枝の姿を、青葉は楽しそうにじっと眺めていた。そして不意に紗枝を後ろから抱きしめる。 「うわわっ!? 青葉お兄ちゃん何で抱きつくのー!?」 「ごめん、可愛らしくてつい……嫌だった?」 青葉は抱きしめながら紗枝の顔を覗き込むと、首をかしげてみせた。 その言葉を聞いて、紗枝はカーッと顔を赤らめた。 「いや、嫌って訳じゃないし嬉しいけど……でも恥ずかしいからー!」 紗枝はじたばたと暴れる。だがその抵抗は控えめだ。 青葉はさらにぎゅっと抱きしめると、紗枝の耳元で小さな声で囁いた。 「今日は離さないよ?」
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