●『白く輝くツリーの下で』
クリスマスの街は、毎年お祭りのように賑やかだ。 今年も、街角には色鮮やかなデコレーションが施され、ショーウィンドウの中では小さな人形がクリスマスの寸劇を繰り返している。 道を歩く人は誰もが笑顔で、今日の待ちは幸せがたっぷり詰っているようだった。 天気は生憎の曇り空だったが、時おり落ちてくる粉雪がクリスマスの雰囲気を盛り上げる。 街中でたくさんのイベントが催され、1日ではとても回りきれない。そんなイベントを空と朱鷺も、たっぷりと楽しんでいた。 やがて日も暮れてきた頃、大きなツリーが飾り付けてあると話題になっている公園へと、2人は足を向けた。 「ふやや……きれいですねー」 ライトアップされたツリーを2人で見上げれば、真っ暗な夜空からふわふわと雪が落ちてくる。 「すごいね……本当にきれいだ……」 明滅するツリーのライトが、降り注ぐ雪を様々な色でキラキラと輝かせる。 光が降ってくるような、その幻想的な光景に、2人は思わず見とれてしまっていた。 そうする間にも、降り続いた雪がツリーだけでなく、2人の体にも薄く積もり、吹き始めた風の冷たさに、朱鷺が小さく震える。 彼女の隣に立っていた空が、その様子に気付くと、静かに彼女の後ろに移動した。 「……?」 隣から空の姿が消えて、朱鷺がきょろきょろと周囲を見回す。 慌てる彼女の後ろから、空がそっと手を伸ばし、彼女の体を抱きしめる。 「これなら、暖かいよね」 少しだけビックリした様子の朱鷺を、空が微笑みながら覗き込む。 でも、空の顔も赤くなっていて、彼女もそれを見るとほっとしたように微笑んで頷いた。 自分の胸の前にある空の手に、朱鷺も自分の手を重ねてやんわりと握り、そして、2人でまたツリーを見上げる。 雪は降り続き、ツリーは雪にも飾られて、大きなキャンドルの電飾のように輝いている。 温かな光を受けながらも、風は冷たく、冬の夜は寒さを増していく。 そんな中でも、2人が触れ合うところから広がるぬくもりは、全身へと広がって、これっぽっちも寒さを感じさせない。 穏やかな温かさに包まれて、空と朱鷺はいつまでもツリーを見上げていた。
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