柾上・霧也 & 四月一日・蒼星

●『月と太陽』

 雪の舞う中、荷物を片手に蒼星は早足でとある場所に向かっていた。
「今年も、霧也と一緒なんやね」
 当然の事なのだが、つい口に出して確認してしまう。
 一度依頼を受ければ生死をかけて戦う自分達が、今年も同じ様にクリスマスを迎えられる。
 その事が無性にうれしかった。
 そんな事を考えながら歩いていると、気がつけば立派な門構えの屋敷の前へと到着していた。

「いらっしゃい、蒼星さん」
 蒼星を部屋に迎えた霧也の第一声である。
 特に構える事も無く自然体である霧也に比べ、部屋に通された蒼星の方は明らかに緊張気味。
 とりあえず用意された座布団に座ると、蒼星は手にした袋を早速広げる。
「折角のクリスマスなんやし、手作りのプレゼント作ったらええと思うやけど……霧也はんは、こういうの嫌いやろか?」
 その言葉と共に袋から出てきたのは、数珠の材料となる紅水晶と紫水晶、それらを纏める為の紐であった。
「手作りのプレゼントですか、それはいいですね。これなら……」
 不安げな表情を見せる蒼星に、霧也は笑顔で返すと背後にある小物入れから小さな金属片を取り出す。
「これなんか、私達にはピッタリだと思いますが」
 そう言って蒼星に手渡されたそれは、太陽と月の形を模した留め具であった。
 それを受け取ると、蒼星は袋の中身も添えて二人の真ん中へと持ってくる。
「うち、こういうの得意なんやで♪」
 そう言いつつ、蒼星が手早く材料を二等分する。
「お互い作ってから交換ってどうやろか?」
「いいですね」
 返事を聞いて、蒼星は早速数珠の製作を始める。
 それに対して、不慣れな霧也は一つ一つの工程に戸惑いがち。
「こうすればいいんや」
 そんな霧也に、一つ一つアドバイスをする蒼星。
「ふふ、蒼星さんはよいお嫁さんになれると思いますよ」
 幾度とアドバイスを受けていた霧也が、ふと漏らした言葉。
「え、や、い、嫌やわもう……からかわんといて」
 耳まで真っ赤になる蒼星をみて、クスリと笑う霧也だった。

「はい、これでおしまいです」
 最後に月の留め具を取り付け、作り終えた数珠を蒼星に見せる霧也。
「では交換と行きましょうか」
「う、うん」
「あ、あんな……右腕、出して欲しいんやけど」
 何かしら気の利いた事でもと考えていた蒼星だったが、いざとなると何も思い浮かばない。
 ただ自分でも顔が真っ赤になっている事は良くわかった。
 そんな彼女を見て、霧也がおでこ同士をそっとくっつける。
「メリークリスマス、蒼星さん」
 そういいつつ、蒼星の左腕に数珠を巻きつける霧也。
「メ、メリークリスマスやで」
 それに勇気を貰ったのか、震えつつも無事に霧也の腕へとはめる蒼星。
 初々しい二人の微笑ましいクリスマスは、まだ始まったばかりだった。



イラストレーター名:瑞