●『サンタの贈り物♪』
今日は、とっても楽しいクリスマスパーティーだったよ。 みんなでプレゼント交換をしたし、不思議な味の紅茶や形容しがたい味のアイスも食べられた。寒中水泳、頑張ったよ。それにいろんな人とおしゃべりしたし。 けどね、やっぱりちょっとなにか足りないと感じたんだ。 隣に、静音がいなかったからかなあ……。
「でね、そのアイスがもう……」 日暮れ時の校舎内を、緋央と静音が歩いていた。寄り添う2つの影は、夕日のオレンジ色をうつした地面に長く伸びている。 一緒に散歩できる時間は少しだけ。その僅かな時を惜しむように、二人ともおしゃべりに一生懸命だった。 「私も食べてみたかったわ。修行になりそうだし」 「や、やめておいた方がいいよ!」 自分への鍛錬を欠かさない静音らしい言葉に、首を振って緋央が止める。それを見て、青い色のドレスを着た静音が笑った。 あまりにもその服と雰囲気が似合っているから、緋央は改めて静音の服装を見て尋ねた。 「静音はダンスパーティーはどうだったの?」 「聞きたい? 長くなるわよ」 「うん、聞かせて!」 ちょっと勿体ぶった静音の言葉に、緋央が頷く。それを見て、静音がよしよしと緋央の頭を撫でた。 「……でね、でね!」 おしゃべりに夢中になった緋央が、静音の腕と組む手に力を入れる。自然と緋央の立派な胸が静音の腕に当たり、彼女は少々複雑そうな顔をした。……緋央は気づかなかったが。 そんな楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまった。 散歩の終着点である校門に辿り着く。もう日は沈みかけで、地面の影もほとんど見えなくなるくらい周囲が暗くなり始めていた。 ぱっと離れて、緋央は校門を背にして静音と向かい合った。 もっと独り占めしたいけれど、彼女は、このあとも忙しいみたいだから。 (「……あんまり引き留めたら悪いもんね」) 心の中で呟いて、緋央はニッコリ笑った。 「メリークリスマス! 静音が素敵な夜を迎えられますように」 聖夜に精一杯の願いを込めて。緋央サンタから、大事な大事な友達に祝福の贈り物。
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