●『お家でクリスマス―暖かな我が家』
クリスマスツリーが飾られた部屋に、イローナと新は二人きり。 今夜はクリスマス・イヴ。 二人で迎える、二回目の聖夜だ。 「この一年、色々とあったな」 過ごした日々を振り返り、新がイローナに言った。 「ハイ。その一年で、少しは私も成長したのかな。少し前までは、こんなことできなかったのに」 イローナが微笑んで、スプーンに乗せた料理を新の方に見せた。 新はソレを見ると、フッと笑って静かに口を開けた。 実に自然な流れでイローナがスプーンを新の口に運んで、彼がそれを食べて、美味しさが口の中にサッと広がった。 「どうですか? これ、結構な自信作なんですよ」 言葉こそ誇らしげだが、言っているイローナの頬は赤い。 「うん、やっぱり最高だな。特にイローナからあーんってされたときは格別だ」 対照的に新の物言いは実に堂々としていた。心の底からそう思っているからだろう。 「ほら、こっちも美味しいぞ」 今度は新が、ケーキをフォークで刺してイローナに向ける。 「え、えーと、……あ〜……ん」 顔をますます真っ赤にしながら、イローナはぎこちなく口を開く。 ケーキを食べさせてやって、新は「どうだ?」と、イローナに促した。 実際は動転して、心臓が高鳴りすぎて味も分からなくなってしまっているイローナだが、そこは笑顔で「美味しいです」と答える。 二人だけの甘い時間。 それを堪能していると、ふと、新はイローナの口元に気付いた。 「っと、クリームがついているぞ」 「え? クリーム?」 いきなり言われて、イローナが小さく慌てた。その肩を新がポンと叩く。 「取るのでジッとしていてくれ」 「あ……」 イローナが答える前に、新は動いていた。 近づく彼の顔。 イローナは驚くこともなく、抵抗することもなく、自然に受け入れる。 そして、二人の唇が重なった。 「ん……」 「……ん」 しばしの間。 二人の唇が、一度離れる。 「大好きですよ、新さん。来年の今夜も、その先も、ずっと一緒にいてくださいね」 顔を真っ赤にして、だけど最高の笑顔で、イローナ。 「俺もだ。……ずっと一緒にいるからな」 言う新の顔も、ここにきてかすかに赤い。 二人は手を握り合って、二回目のキスをする。 今度はイローナから、新へ。 二人だけの時間。 二人だけの一瞬。 最高の気持ちを、私から貴方へ。俺から君へ。 二人は、互いに相手を感じ合って――。 新の手を握るイローナの左手の薬指には、彼からもらった銀の指輪が光っていた。
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