門丘・玄六 & 多々羅・庵

●『甘えんぼうのサンタクロースとアニキ肌のトナカイさん』

 今日はクリスマス・イブ。銀誓館学園では、あちらこちらでクリスマスパーティーが行われており、すっかり夜のとばりが下りた今でも、楽しそうな笑い声が絶えず聞こえていた。
「みんな喜んでくれたみたいで、よかったですね」
 空になった袋を手に、庵は玄六ににっこりと微笑みかけた。
 庵はサンタに、玄六はトナカイに扮して、学園中にプレゼントを配り歩いていたのである。
「配った甲斐があったってもんだよな」
 玄六もまた満足そうに笑みを浮かべ、屋上へ続く扉のドアノブに手をかけた。
 重い鉄扉をくぐった先に広がっていたのは、満天の星空。
「イブの夜はお星様も大盤振る舞いってか? 綺麗だな」
 ほうと白い息を吐きながら、夜空を仰ぎ見て感嘆の声を上げる。
 彼にならうように顔を上げた庵もまた、うっとりとため息をこぼした。
「ほぁ〜、ホントですねぇ。玄六先輩と二人きりのロマンチックな夜……」
 寒さのせいか感動のためか、頬を染めて星空を見つめる庵。
 ふと冷たい風が屋上を吹き付け、庵は驚いたように肩をすくめた。
「ひゃうぅっ! やっぱお外は寒いです。……ねぇ、せ〜んぱい?」
 玄六のコートの裾をくいくいと小さく引っぱりながら、庵は甘えるように彼の顔を下から上目がちに覗き込む。
 そんな彼女のしぐさを愛おしく思いながら、玄六は庵の髪を優しく撫でてやった。
「ん? どした庵?」
 庵は照れたような笑みを浮かべながら、玄六にぴったりとすり寄る。
「幸せいっぱい配って頑張った庵サンタにも、プレゼント……欲しいな♪」
「よしよし、それじゃあオレの可愛いサンタさんには……」
 玄六はやわらかく微笑みかけると、庵をふわりとお姫様抱っこで抱え上げた。
「きゃっ!」
「銀誓の天辺で愛を捧げようじゃないか!」
 驚きとはずかしさから耳まで真っ赤になっている庵に、玄六は極上のスマイルを投げかけてから、彼女の耳元に唇を寄せる。
「世界で一番庵が好きだ、誰よりも愛してる」
 優しくも凛とした強さを持った囁きに、庵はさらに赤くなる。けれどそれは、はずかしさよりも嬉しさからくるもので。
 しばらくもじもじとしていた庵であったが、ふわりと笑みを浮かべると、玄六の首元に抱きついた。
「庵も玄六が大好きっ。じゃあ、私からもお返しに……」
 彼女のやわらかな唇が、玄六のそれと重なる。

 聖夜の、満天の星空の下で交わした甘いキス。
 愛のこもったプレゼントは、二人の絆をより一層深めたのであった。



イラストレーター名:柾木見月