●『* Frohe Weihnachten *』
クリスマスパーティーの帰り道。二人は、楽しげに歩いていた。 「良い物当たって良かったぁ。晴貴さん、これで温かい飲み物を一緒に飲みましょうね」 「そうだな。あとで、ココアでも一緒に飲むか」 「あ……はい。 このカップで飲むの、楽しみです」 穂乃美の手には、パーティーのプレゼント交換で当たった白い陶器のカップ。雪の結晶の模様がついている、綺麗なデザインだ。それを大切そうに持って、晴貴に笑いかけている。晴貴は、自分がプレゼント交換で当たった柊の葉のストラップをつけながら、穂乃美の言葉に応えていた。 そうして並んで歩いていると、前方に見えてきた、飾り付けられてライトアップされているクリスマスツリー。 「わあ! 綺麗なクリスマスツリー!」 穂乃美はそれを見ると、嬉しそうに笑って駆け出した。 「おい、小野崎。そんなにはしゃぐとこけるぞ」 「大丈夫ですよ。晴貴さんも、早く!」 その様子に、晴貴はため息をつく。しかし、その表情はとても穏やかなものだった。穂乃美は、いつも危なっかしいが……だからこそ、守りたいと思うし、笑顔が可愛らしいために和んでしまうのも事実なのだ。 「ホント、危なっかしい……」 そう呟いて、ツリーに向かって歩き出す。そして、嬉しそうにツリーを見上げている穂乃美の隣に立つ。 「晴貴さんすごいです!ピカピカですよ!」 穂乃美は、晴貴のコートの袖を掴んで、はしゃいでいる。その様子に、晴貴は微笑んで、穂乃美の頭を撫でる。そのことに、嬉しそうに晴貴を見て笑って……その後、再びツリーに視線を移した。 「このツリー、とっても綺麗ですよね」 そう、ツリーを見上げて満面の笑顔で言う穂乃美に、晴貴もツリーを見上げる。 「綺麗だな……」 そうして、しばらく二人でツリーを見つめていた。 不意に、穂乃美が晴貴の手を握る。驚いて晴貴が穂乃美を見ると、穂乃美は晴貴の顔を見つめて笑っている。 「来年も一緒に、ツリー見ましょうね」 その笑顔に対して、晴貴も笑顔を返す。 「ああ、そうだな。また来年も、こうして隣でツリー見てそうだよな」
来年も、その先も。きっと、一緒にこうしてツリーを見ているのだろう。 繋いだ手の温かさから、二人は、なんとなくそう感じていた。
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