●『聖夜に交わす2人の想い』
「俺の巫女として共に歩んで貰えないか?」 灯夜が雪菜にそう告げたのは、二ヶ月前のことだった。 以前の戦いにおいて手助けして貰ったのをきっかけに、だんだんと共に過ごす時間が多くなっていった。 友人に対するものよりも強くなった感情に、灯夜は新しい関係を築こうとする。 土蜘蛛である灯夜にとって巫女とは、全幅の信頼を置ける相手。 灯夜が雪菜を巫女にと望んだのは、生涯を共に過ごし、支えて欲しいという思いからの言葉だった。 「はい……」 雪菜は自らの想いが今一つ伝わっていないことを悟ってはいたが、灯夜の発言に自分に対して巫女としての能力を求めているのだと思い込んでしまった、 恋心を秘め、灯夜を主として仕えることを決心した雪菜だったが、その落胆は隠し切れるものではなく、様子がおかしいことに気づいた灯夜は知人に相談する。 そこで二人の『巫女』に対する認識の違いを指摘され、クリスマスも近いのでその時に雪菜へ通じるようにはっきりと思いを告げるように助言を受けたのだった。
「先日はすまなかった」 「い、いえ……」 イブの夜、雪菜を呼び出した灯夜は知らぬうちに彼女を傷つけていたことに頭を下げる。 クリスマスという特別な日に誘われたことに戸惑いつつも期待していた雪菜は、緊張に体を硬くしながら小さく頭を振る。 「改めて告げよう。好きだ雪菜、これからも俺の傍らで共に歩んでくれ」 「本当に……? 私を……求めてくれるのですか」 呆然と問いかける雪菜を、灯夜は無言のままそっと抱きしめる。 体にかかる灯夜の力に感覚が追いついてきたのだろう、顔を赤く染め涙ぐみながら、雪菜はその小さな体を預ける。 「「メリークリスマス」」 晴れて恋人同士なった二人は、クリスマスプレゼントを交わし、ようやく想いが通じ合ったことを喜び合う。 今までとは形を変え新しい関係となった二人のはじめての共同作業は、聖夜を過ごす全ての人を祝福するように、冬の夜へと静かに響いていくのだった。
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