カノンノ・フレアハート & 宵闇・満月

●『クリスマスの夜に告白を――』

 クリスマス・イヴの夜。
 学校中がクリスマスパーティに賑わう中、人気のない屋上にふたつの人影が姿を現した……カノンのと満月である。普段は賑やかな屋上も、今日は二人だけの世界。それでも、静かに星空を眺めたいと思い立ったのだ。
 冷たい空気が頬に触れる。吐き出す息は真っ白。
「一緒に、お星様見よう?」
 その寒さを感じさせない明るい口調で、屋上のコンクリートに腰を下ろしたカノンノが満月を誘う。
 満月はこくりと頷いて、カノンノの隣へ。スカートの裾を直しながらきょろきょろと、少し不安そうに辺りを見回した。ぱちくりと開いた瞳がカノンノを見詰める。
「……こーすれば、あったかいの」
 満月がぽすんと腰を下ろしたのは、カノンノの膝の上だった。カノンノはくすくすと笑い、小さな身体を後ろからぎゅっと抱き締める。満月は嬉しそうに頬を染めると、持ってきていた魔法瓶の水筒をカノンノに差し出した。
 水筒の蓋を開けると、中からはふわりと紅茶のいい香り。ふわふわと白い湯気が天へと昇っていく。水筒のフタに紅茶を注いで、二人で順番に味わった。身体の中を温かい紅茶が落ちていく感覚に、なんだかホッとする。
 キラキラと瞬く満天の星空。空に近いこの場所からは、星が本当に良く見える。
 ゆっくりと、流れていく時間。
 交わす言葉は少なくても、気まずくはならない。
 本当に仲良しな人となら……話さない時間だって、一緒にいるだけで十分に幸せなのだ。

「私ね、最初はびっくりしちゃったけど……」
 しばらく、ぼんやりと星を眺めていたカノンノがぽつりと口を開く。
 伝えたかったこと、ちゃんと言葉にしたい。この幸せを、噛み締めながら。
「満月くんの事、大好きだよ?」
 にっこりと笑い、満月を見詰めるカノンノ。突然の彼女の告白に、満月は驚いて思わずあたふたと視線を泳がせた。けれど……優しいカノンノの緑色の瞳に、満月も勇気を振り絞る。
「僕も……すき、です……」
 桃色の唇から伝えられる、大好きの気持ち。
 寒い夜が、少しずつ二人の距離を近付けてくれるのだった。



イラストレーター名:さいばし