●『サンタクロースの証明』
それは、12月25日の朝のことだった。 目覚めた烈人は、頬に何か変わった感触が当たっていることに気付いた。 「あ、あれ……?」 いつも使っている枕とは違う感触。なんだろう、これは? 目をパチクリさせて、彼が身を起こしてみると、そこには白い袋があって、 「…………」 烈人は、自分の枕元に置いてあった袋をジッと見つめる。 「……わ、……わぁ!」 その白い袋の意味するところに気付いて、烈人は跳び上がらんばかりに驚いたのだった。
弟の声が廊下まで響いていた頃、紅羽はのっそりと身を起こして「ん〜……」と目覚めきっていないまま、髪を手で櫛づけた。 「なんかうるさぁい……」 と、着衣の乱れも大して直さないままドアの方を向くと、同時にそのドアが勢いよく跳ね開けられる。 「お姉ちゃん、お姉ちゃんお姉ちゃん、サンタさんからプレゼントーっべふっ!」 弟の騒ぎ声で瞬時に覚醒した紅羽が、部屋に飛び込んできた烈人の顔に自分の枕を思いっ切り投げつけた。 「部屋に入る時はノックしろと言っただろ、バカヤロウ!」 起きたまんまの姿の姉が大声で叫ぶが、プレゼントを持った烈人はその言葉すら届かぬ様子で、プレゼントの入った袋を両手で掲げて見せた。 「ねぇねぇ、プレゼントもらったよー!」 エライテンションで騒いでいる烈人の頭に乗っている猫のぬいぐるみも、彼の動きに合わせて手足をブラブラ踊らせていた。 「はいはい、よかったな。おまえがいい子だから、サンタさんがプレゼントをくれたんだろ」 「やった、僕っていい子だったんだね! サンタさん、ちゃんと見ててくれたんだね!」 瞳を輝かせて、というか光り輝かせて、烈人はとにかく溢れる嬉しさを全身で表現する。 「サンタさんって凄いよね、世界中を回ってるのに一晩で全部の子供にプレゼントあげちゃうんだもんね! 凄いなー!」 そんな弟の様子を見て、紅羽は小さくため息をついた。さて、髪を直そうか。 紅羽がそう思っていたところに、烈人がつい、口を滑らしてしまう。 「あ、お姉ちゃんの分のプレゼントは無いんだね。分かった、お姉ちゃん、悪い子なんだー。だからサンタさん、お姉ちゃんにはプレゼントをーっべふっ!」 最後まで言い切る前に、紅羽が再び投げた枕が、彼の顔面を直撃していた。 「余計なお世話だ! さっさと出て行け!」 「ハーイ!」 二回も姉の攻撃を喰らいながらも、やはり嬉しさを溢れさせている烈人は、紅羽の命令にサッと手を挙げて部屋から出て行った。きっとこれから、プレゼントを用意した両親に、そのプレゼントを自慢してくるのだろう。目に見えるようだった。 「やれやれ……」 櫛で髪を梳かしながら、紅羽は考える。 あんな弟でも、今年で小学五年生。 ちゃんと成長するのかなー、アイツ……。 ちょっと不安な、紅羽だった。
| |