風見・玲樹 & アキシロ・スチュワート

●『【創作漫画:風見家の恋愛物語】クリスマス編』

「今日は楽しみだなぁ」
 気分も浮足立った帰り道、玲樹はその不意を突くように現れた誘拐団によって拉致されてしまった。
 その報を聞きつけ、最もいてもたっても居られなかったのは大切な主の一人をまんまとさらわれてしまったアキシロだ。彼はありとあらゆる手段を講じ、誘拐団のアジトを突き止め、単身乗り込んでいく。
「玲樹様、ご無事ですか?!」
 アキシロが目にしたのは、誘拐団の男たちによって手込めにされかけている主の姿。眼鏡がやけに怪しく光ったかと思うと、アキシロはあっという間に誘拐団を壊滅させてしまったという。
 何はともあれ、玲樹を無事救い出し、彼ら二人は少し時間が遅れてしまったものの、欧州の街並みを模したアウトレットモールにある大きなクリスマスツリーの前のベンチに腰掛けた。
「玲樹様、お寒くありませんか?」
「ううん、アキシロのマフラーのおかげであったかいよ」
 そのマフラーは玲樹のためにアキシロが持ち込んだもの。それは彼ら二人を結びつけるかのように一緒に巻かれていた。
「今日は本当にありがとう、アキシロ……。あの時は怖かった……もう、僕の傍を離れないでね……?」
 さりげなく玲樹がアキシロとの距離を詰め、上目遣いで見つめる。その玲樹の手を、アキシロはそっと押し抱くようにとった。
「はい、もうわたくしは貴方を怖い目に遭わせたりしないよう、片時もお傍を離れません。ずっと、お傍に居させて下さいませ」
 二人の視線と視線が重なり合う。二人にはもう、言葉はいらなかった。その距離は自然と更に縮まっていった……。

 ――という、内容のボーイズラブ漫画(従姉妹の少女作画)を見せつけられ、それに主演させられた玲樹とアキシロの二人は、それぞれが微妙な表情を浮かべていた。
「何で僕がアキシロに温められなきゃいけないんだ!」
 と、玲樹が叫んで主張すると、そこへすかさずアキシロが、
「もし本当にこんな事になっても、玲樹様にコートを渡すだけですから」
 と合いの手を打つように返した。
 本人たちは全く認めていなかったものの、後日二人が聞いたところによると、この作者はこの同人誌を冬のイベントで販売し、それがなかなかの売り上げを叩きだしたという。それに味をしめた従姉妹の少女がまたもや二人を題材にして同人誌(言うまでもなくボーイズラブ)を作ると断固主張しているらしく、ますます困惑する玲樹とアキシロの姿があったのだった。



イラストレーター名:柾木見月