●『二人きりの聖夜 ――Pure――』
「クリスマス、どこか行きたい所はあるか?」 終凪の問いかけに、雪那は応じた。 「終凪さんのお家にお邪魔してもいいかな?」 ――それが、数日前のこと。
終凪の家……その一室。 雪那の希望通り、クリスマスを終凪の家で過ごしている雪那と終凪の二人。 「雪那は肉が薄いな。枕にするにはちょうどいいが」 ソファーの上で雪那に膝枕をして貰った終凪は、自分が感じる雪那の太腿の感触を敢えて口に出した。 「終凪さん……」 終凪の言葉に雪那は僅かに頬を赤らめながら瞬く。 恥ずかしがっているような雪那の様子を終凪は口元に笑みを浮かべて見上げた。瞳に宿るのは悪戯っぽい光で、この状況を……雪那の様子を、心底楽しんでいる。
終凪はゆるりと瞬き、雪那に手を伸ばした。 さらさらとした髪を指先ですく。髪をすいた指先を、雪那の頬へと移して柔らかく撫でた。 「……よかったのか?」 「え?」 終凪の静かな……けれど、突然の問いかけに雪那は瞬いた。 そんな雪那に、終凪は言葉を続ける。 同世代の――普通のカップルのように、イルミネーションを見たりとか……デートして回らなくて雪那は構わなかったのか、と。 終凪の問いかけに雪那は瞬いた。 終凪が触れる掌に、雪那は自らの掌を重ねる。 「……構わないわ」 雪那は呟いて、幸せそうに目を細めた。 「私が、望んだの」 言いながら雪那は膝枕をしている終凪の髪をすく。 「――二人でこうして過ごしたかったの」 恋人同士になってちょうど一年。……そして、雪那にとっては誕生日という特別な日。 「……終凪さんと二人で祝えて、嬉しい」 雪那は思っていることをそのまま伝えた。 そんなまっすぐな思いに――雪那の素直な言葉に、今度は終凪が照れる番になる。 「そうか」と口の中だけで応じて、終凪は雪那の頬から唇へと指を動かした。 そっと――唇をなぞるように指を動かす。 ……二人の気持ちは確かにつながっていて。 それが、わかって。――わかりあえて。
終凪は身を起こし、雪那へキスをした。 一度離れ、再び唇を重ねる。言葉なく……キスを交わす。 静かな、二人きりのクリスマス。 互いの心が満たされながら、夜は更けていく――。
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