●『WE:気分アップ(構え)+ドレスアップ(防具)』
クリスマスパーティの帰り道。 キラキラと輝くイルミネーションの中を、二人並んで歩く。 「先輩とパーティ参加、楽しかったな〜」 隣を歩く和樹の横顔を歩きながら見上げて呟く伊那穂。穏やかに笑む和樹の表情が、彼も楽しかったのだろうと教えてくれる。嬉しくて……そして、一緒に居られることが幸せで、思わずぴょんっと軽く飛び跳ねた。 「ホントに楽しいなっ♪ ……あっ」 と、その瞬間、伊那穂の肩からするりとコートが落ちて地面に落ちる。 顔が火照っていて暑かったので、コートは肩から掛けているだけで袖は通していなかった。気を付けては、いたのだけれど。少しぬかるんでいた地面から慌てて取り上げたものの、泥で汚れてしまっていて、もう一度着るのは無理そうだ。 「大丈夫か?」 心配そうな顔で覗き込む和樹からコートの汚れを隠し、へへっと笑って見せる。もともと、気分が盛り上がりすぎていて、暑いくらいだったし。 「へーきへーき」 「でも、この寒い中でコート無かったら辛いんじゃないか」 「太陽再生するからだいじょーぶ!」 太陽再生が今出来るわけでも暖かくなるわけでもないけれど、彼を安心させたくて。太陽のようなにこにこ笑顔を浮かべてから、また、弾むように歩き出す伊那穂。一方、思案顔なのは和樹である。どこか暖かいところに入って休んだ方がいいだろうか……と考えを巡らせつつ、自分のコートを脱いで伊那穂を追い掛けた。 「伊那穂」 名前を呼ばれて立ち止った伊那穂の肩に、ふわりとコートを掛ける。これならば、どこか店に入るまで暖かいだろう。 「先輩、寒くないの?」 「ああ、これくらいなら平気だよ」 ぱちくりと瞳を瞬いた伊那穂に、和樹は軽くかぶりを振って笑む。夜の空気はひんやりとしていて、寒くないと言えば嘘になるけれど。 和樹が見詰める先の伊那穂の表情が嬉しそうに緩む。和樹の体温を感じられるコート。けれど、その温もりよりも……優しい気持ちが素直に嬉しい。今度はちゃんと袖に腕を通してから、ぎゅうっと和樹に思いっきり抱き付いた。 「!? 伊、伊那穂? どうした、いきなり抱きついてきて!?」 「心のあったかさをおすそわけ!」 屈託のない笑顔を見せて、和樹の顔を覗き込む伊那穂。 「……伝わったかな?」 確かに、これなら暖かい。大胆で突拍子もない伊那穂の行動。けれど、こういうところが可愛らしい……と、心から思いながら、和樹は伊那穂の身体を抱き締めた。 「伝わったよ」 そっと、伊那穂にキスをして、しばらくそのまま抱き締め合って。 (「しかし、この状態でどうやって帰るんだろう?」) ふとした疑問が和樹の頭を過ぎる。 抱き締め合ったままでは、とても歩けそうにはないけれど。 (「まぁ、いいか」)
……もう少し、二人のクリスマスは続くのだった。
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