●『等身大の相合傘』
「雪だ雪だー!」 雪の上を、全ははしゃぎまわっていた。快斗はそれに付き合って、外に出てきてはいたが、全のように元気に遊びまわることはできない。 「うー、さみっ! よく、こんな中で元気に遊べるな、全は」 「だって、折角の雪だろ! 遊ばないと損じゃん!」 まるで犬のように、雪の上を転げまわっている全。それを、快斗は見守っていた。 暫く見ていると、全は何かを雪に書いているようだ。なにやら、大きな落書き……。 「ん? 何か書いてんのか?」 快斗が、気になってそれを覗き込んでみると、 「よし! 快斗、いっくぞー!!」 全が突然快斗を引っ張って、押し倒すような形で雪の上に倒れこんだ。 「いてて……。ってこれ相合傘か?」 二人が倒れこんだところには、全がさっきから書いていた落書き……相合傘があった。 「へへへ。実はやってみたかったんだよな!!」 全は楽しげに笑う。快斗は、暫くそれを見つめていたが……。 「まったく……可愛いよな、全は」 そう言って、キスをする。全は顔を真っ赤にして騒ぎだす。 「うぅぅぅっ!! 卑怯者っ!!」 「雪の上じゃここまで……続きはまた今度、な?」 快斗は、体を起こして、全の頭を撫でる。その顔も真っ赤だということに、暴れている全は気づいていないようだ。 「さてと、寒いからそろそろ部屋の中入ろうぜ」 快斗は立ち上がって歩き出す。 「ちょっと待て! 今度ってなんだ、今度って!」 その背中に、全は叫んでいる。快斗は、振り向かずに言った。 「メリークリスマス、全」 後に残された全は、暴れ疲れたのか、大人しく雪の上に転がっていた。 「あー……なんか、頭パンクしそうだ!」 そう言って、うつぶせになって、顔を雪に埋めるのだった。
その後、全は迎えに来た快斗と共に室内に戻るのだが……その時、二人の顔は赤かった。 雪の中で遊んだせいで風邪をひいたのだろうか? それとも……他の理由なのだろうか? それは、二人にしかわからない……。
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