釘宮・千歳 & 姫矢・涼

●『これからもずっと…』

「今年こそは」
 涼は密かに決意した。
 去年も一昨年も、家で過ごした。確かに恋人の千歳が作ってくれたケーキはあった。そのケーキを堪能し、甘いひと時を味わった。
 恋人同士になって最初の冬は、千歳特製3段重ねの大きなケーキを制限時間付きで食べるというクリスマス。駄目だった場合は罰ゲーム付きで。
 2度目の冬は炬燵でまったり。千歳が作った普通サイズのケーキを食べながら1年前のクリスマスを思い出したりして、ちょっと恋人らしい事をしてみたり。
 今年は恋人同士になって3度目の冬。
「今年こそはクリスマスデートしたい」

「姫くん、アレかわええ♪」
 クリスマスの賑やかな街。流れる楽しげな音楽。
 クリスマスディスプレイを競い合うショーウィンドウを見て、瞳を輝かせて楽しげな笑顔を浮かべる千歳。
(「誘って良かった。やっぱりクリスマスデートって良いな!」)
 涼は、楽しそうにする千歳を眺めて、心の中でガッツポーズした。
 確かに、家で二人きりでまったりするのも良い。しかし、こういう表情は外に出ないと見られない。
 いっぱい遊んで、ちょっと奮発した豪華な食事をしながら色々な話をして、歩きながら街を見て、また色々話して……。
(「やっぱり最後は二人だけの空間だよな」)
「じゃあ、もっと可愛くて綺麗なの見に行く?」
「? ……うん」
 首を傾げる千歳の手を引いて、涼は歩き出した。

「綺麗やわぁ……」
 眼前に広がる景色に千歳は瞳を輝かせる。
 涼に連れてきてもらった裏山から見渡す街は、イルミネーションが煌き、まるで宝石を散りばめたよう。そこに、いつの間にか降り出した雪が、なんとも幻想的な景色を作り上げていた。
「ほんま可愛くて綺麗……」
 ――ふわり。
「え!?」
 急に千歳の身体が、涼に抱きかかえられた。
 突然の事に驚く千歳だが、見上げると、真剣な眼差しとぶつかる。
「姫くん……」
「みぃ……メリークリスマス」
 優しく囁いた涼の唇と千歳の唇が重なった。

 家の中でまったり静かに過ごす温もりとは違った、凛とした冷たい空気の中に感じる温もりは、新鮮で色鮮やかで。
 涼と千歳は、2人だけのひとときを堪能するのだった。



イラストレーター名:蒼和伸