●『過去と現在とその未来も』
今日は待ちに待ったクリスマス。終業式を終えた後、大きなクリスマスツリーの下での待ち合わせに、二人は時間通りに到着した。冬の寒さを押し返すような華やかな雰囲気の中で、眩いくらいの明かりに飾られたクリスマスツリーに、わぁと思わず歓声が零れる。 「メリークリスマス、ノーマくん」 「メリークリスマス、真琴」 付き合ってから、初めてのクリスマス。聖夜当日の待ち合わせ、というのがやっぱり少し気恥ずかしくて、二人の周りを彩るようにきらきらと輝くイルミネーションをくるりと見回してから、今年もいろんなことがあったよね、と真琴は切り出した。ノーマがそれに答えて微笑んで指を折り、二人で今年の思い出を数えていった。 ノーマの結社に真琴が追っかけて入っていったり、二人が付き合い始めたり、修学旅行に石垣島に行ってマンタをみたり、初めてのキスをしたり、学園祭の打ち上げでは江ノ島海岸で花火を見たり、戦争で背中を合わせて戦ったり、運動会で敵同士になって本気で戦ったり。 両手では足りないくらいの思い出に、ノーマは感慨深げに言う。 「振り返ってみたら、いろんなことがあったな」 「そうだね」 少し照れたように笑んだ真琴に、ノーマは深呼吸をしてから、覚えてるか? と一つの約束を持ち出した。それは、ノーマが一年前のクリスマスにした、一つの問い。 「お互い相手がいなかったら一緒にクリスマスを過ごさないか――」 約束は果たせなかったけど、二人はもう恋人同士。 「あれから、ずっと変わってないよ、俺の気持ち。真琴が好きだ。真琴じゃなきゃダメなんだ」 ノーマは去年の自分を思い出しながら、今の自分の気持ちを真琴に告げた。しっかりとノーマの目を見つめて、真琴は口を開く。 「あの時から、今も、そしてこれから先もきっと、ずっと好きだよノーマくん」 真摯に答えた真琴はとても嬉しそうで、そんな真琴をノーマは後ろから優しく包むように抱きかかえた。ぴったりとくっついた部分から、ほんのりとした暖かさが通う。これからも、ずっとずっとこの存在を守っていこう、と誓うようにノーマは頭上の空を見上げる。 「真琴、雪だ」 「わぁ、ほんとだ。綺麗だね!」 そこには二人を祝福するかのように、真っ白な雪がひらひらと舞い始めていた。
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