●『聖夜のダンスと誓いの言葉』
街がイルミネーションに彩られる12月。 メルディアスは、クリスマスに行われるというダンスパーティーに琴葉を誘った。 聖なる夜を大切な人、琴葉と一緒に過ごしたい。 そして……3ヶ月前に、琴葉がくれたあの言葉の……告白の返事をする為に。
美しく着飾った女性達や、そんな彼女達をエスコートする凛々しい男性達が行き来する、日も落ちた夜の舞踏会の会場前。 タキシードを着た琴葉は、待ち合わせに現れたメルディアスのドレス姿を見て、瞬きをした。 彼女を包む、真紅のドレス。赤に、彼女の金の瞳や白い髪が良く映えている。その佇まいや仕草も洗練されていて、とても美しい。 そんな綺麗な彼女に少しだけ照れながら、琴葉はメルディアスに手を差し出した。 「行こうか」 「ハイ」 メルディアスは琴葉の手に、そっと自分の手を重ねる。 2人は視線を合わせてにこりとすると、ダンスパーティーの会場へと赴いた。
華やかな会場に流れる、柔らかなワルツ。様々な色のドレスやタキシードが踊っている様は、まるで蝶や花びらが舞っているようだ。 くるくると踊る人々を見て、琴葉が少し困ったような顔をした。メルディアスは首を傾げる。 「実は、ダンスは初めてなんだ……」 申し訳無さそうに言った彼を見て、メルディアスはクスッと笑んだ。 「……私にエスコートさせて……下さい」 メルディアスは彼の手を取ると、自分の腰と手に導く。そして、音楽に乗ってゆっくりとステップを踏み始めた。 琴葉が戸惑わないよう、丁寧に。前へ後ろへステップ、軽くターン。メルディアスが回ると、ドレスがふわりと翻る。 最初は彼女の足を踏まないよう気を使っていた琴葉だったが、やがて少し慣れてきたのか、ダンスを楽しむ余裕が出てきた。 ステップ、ターン、視線を交わして笑い合う。 落ち着いた上品な曲の旋律に合わせ、踊る2人。向かい合う時間は優しくて、触れた指先からも、お互いの想いが伝わるようで。 「琴葉……」 ダンスの足をとめて、メルディアスは琴葉を見上げた。 「ん?」 「お返事を……させて、下サイ。3ヶ月前に、いただいた言葉の……」 3ヶ月前、満月の光の下で琴葉がくれた告白。その言葉を受ける時間が欲しい、というメルディアスの我侭を、琴葉は聞いてくれた。 何度も思ったあの日の答え、そしてその度に心に思い描く貴方のこと。共に歩いてくれないか、と言ってくれた琴葉に伝えたい気持ち。 「……私で良ければ……イエ……」 メルディアスは琴葉の目を見つめる。 「私も……貴方の隣で……歩いていたいデス……ずっと……」 それを聞いた琴葉は目を見開いた。そして嬉しそうに微笑む。 「メル……ありがとう」 彼女のくれた返事の喜びが、心に広がっていく。 ずっと一緒だと誓い、琴葉はメルディアスをそっと抱きしめた。
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