●『煌く木々に囲まれて』
二人で過ごすクリスマスも今年で二度目だ。 裕也は嘉月が昨年のクリスマスに初めてくれた手編みのアフラーを首に巻いて、一緒に金色のイルミネーションに飾られた並木道を歩いていた。 「きれいだね……」 二人で居る嬉しさから嘉月は裕也の腕にぎゅっと抱きつく。 「うん、綺麗だなー」 自然と、二人は笑顔になっていた。互いの温もりに自然と優しい気持ちになれる。 ……優しい気持ちになれるのだが。 (「いやぁ、柔らかいなぁ」) 裕也は腕に抱きつく嘉月の、ふにふにと柔らかい感触がさっきから気になっていた。 にやけそうになるが、ここはにやけるところじゃない。そっとマフラーでその顔を隠そうとする。 「寒い、ですか?」 嘉月の問いかけに裕也は「へ?」とやや妙な声をあげた。 「……えと、それじゃこれで、あったかい?」 裕也が答える前に、嘉月は行動を起こした。腕ではなく、胴にぎゅーっと抱きつく。 「えへへー……裕也、あったかい……」 抱きつかれた裕也はしばし呆然とした。 (「……可愛すぎるじゃないか!!」) しかしそれはほぼ一瞬のことで、抱きつく嘉月をやや強引に引っ張る。 「ふにゃっ」 裕也は勢いに任せて嘉月を引き寄せると、キスをした。 (「ほら、たまには積極的にならないとさ?」) 誰に対するものかわからない言い訳を心の中で浮かべつつ、唇を嘉月から離す。 突然のキスに少し驚くような顔をしていた嘉月だったが、すぐにふにゃっと笑顔になった。 (「たくさんだいすきをくれる裕也が居るから、私は、私で居られる」) 「裕也、だいすき」 言いながら、ふわりとお返しのキスをする。 嘉月のキスにつられるようにして、裕也は幸せそうに笑った。 (「嘉月が大好き。俺を大好きと言ってくれてもっと大好き」) 裕也の笑顔に嘉月は意識せず、まるで祈るように指を組む。 (「……だから、裕也が求めるなら私はそれに、何だって応えるよ?」) ――心の中の呟きは、裕也に届いているだろうか。 思考は声にはしないまま、嘉月の心を告げる。 「ゆうや、あいしてます……」 嘉月の言葉に裕也は瞬いた。 二人の気持ちに相乗効果があるのだろうか。 ――もっともっと、愛したい。そう、思う。 「俺も、愛してるよ。嘉月……」 囁いて、裕也は嘉月を再び引き寄せる。 嘉月の温もりを、心を離さないように――強く、抱きしめた。
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