●『高級レストランでのディナー』
ここはとあるレストラン。
ブラスカとユリンは、二人の時間を楽しんでいた。
今日はクリスマス……神の祝祭日に、恋人たちが共に過ごす日。
「メリークリスマス！」
「メリークリスマスです」
グラスを合わせると、かちんと澄んだ音を立てた。
銀色の大きな瞳を眇めて微笑むユリンの顔を見ると、クリスマスの今日、共に過ごすことに決めて良かったとブラスカは思った。
小学生の二人が飲むのは、ワインではなくジュースだったけれど、二人きりで過ごす時間に何の不自由も無かった。
テーブルに並ぶ料理は、クリスマスを二人で過ごす恋人たちのために作られたとっておき。ユリンがぱくりと食べたパンは、焼きたてで香ばしく。バターの香り高く、ふわふわで、美味しかった。
「ふふっ、ブラスカ、あなたと二人でクリスマスが過ごせてとても嬉しいです」
銀に煌めく髪から覗く狐の耳を小さくゆらし、ユリンが微笑む。
「ユリンが嬉しいのが、俺には嬉しい。良かった……うん、美味いな」
ブラスカが口に放り込んだメインディッシュのステーキは、やわらかくスパイスの効いた肉に、豊かな味わいのソースがとても合う。
「ユリンも熱いうちにいっとけよ」
「はい、冷めないうちに頂きますね。……デザートがどんなものか今から楽しみです」
美味しい食事を囲めば、会話も弾み。
年の瀬も近づく頃合いに、振り返るのは今年の思い出の数々。
窓の外に煌めくイルミネーションの光の欠片を映したグラスを見つめ、ブラスカはぽつりとこぼした。
「今年も色々あったな……」
「そうですね、大きな戦いは幾つも。いつもお疲れ様でした」
頷くユリンも、振り返る。
色んなことがあったこの年……１番の出来事は、こうしてクリスマスを共に過ごせる大切な人ができたこと。
「うん、ユリンもな」
ブラスカの笑顔が、とても嬉しくて、ユリンはつられるように微笑んだ。
「……また、次のクリスマスもこうして一緒に過ごしたい、な」
「はい」
今年の労いと、来年に向けての絆の確認。
ユリンとブラスカ、二人のクリスマスは、穏やかに優しく温かく、過ぎていく。
そんな二人のひと時を言祝ぐように、舞う雪に彩られたホワイトクリスマス。
ふわり、ふわり。
舞う雪が折り重なり、つもりゆくように、想いを重ね、二人の時間をつみかさねていく――二人のクリスマスに、乾杯。
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＆ ブラスカ・レッドレオンハルト
