●『初めてのクリスマス料理』
「……メリークリスマス」 ドアを開ければ、想定通りの人が立っていた。 よつははその人――学を見上げ、にっこりと笑う。 「メリークリスマス!」 よつはの誕生日を忘れてバツが悪そうな学に、全開の笑顔で応じた。 そんなよつはの対応……笑顔に、学は少しばかり目を丸くする。 よつはの対応に驚いているらしい学を「どうぞ〜」と招き入れた。 誕生日を忘れられたことは、正直にいえばすごく悲しかった。 けれど……今日一緒に居てくれるから、今年は許してあげる。そう、決めた。 (「去年は思いっきり暴れたしね」) そう思いつつ意識せずクスリと笑った。 よつはの思い出し笑いに学がまた「え?」というような顔をしている。 「なんでもなーい」とよつはの修業の成果を見せるべく、学の腕を引っ張った。 「見て見てぇ〜っ!!」 よつはは修行の成果……一生懸命練習した料理とクリスマスケーキを並べた机を示した。 「へぇ、すごいな」 彩り鮮やかな料理と、きれいにデコレーションされたケーキ。 学は素直に感心する。 「頑張ったの! 頑張ったんだよ〜! きれいにできたの〜っ!!」 「うん、頑張った」 よしよし、と学はよつはの頭を撫でた。ピンクの髪が学に触れられて、サラサラと軽い音がする。 その手によつはは目を細めた。嬉しさにほんのりと顔を上気させ、「へへっ」と笑う。 「これ、学さんも食べて」 学に勧めて、自分も席に着いた。
「いただきまぁ〜すっ」 受け取ったプレゼントにウキウキしつつ、よつははさっそく一口食べた。 もくもくと噛みつつ、口の中に広がる味に先程までのテンションの高さがどんどん下がってくる。 味は……食べれないことも無いけど少し微妙で……。 「う〜……頑張ったんダケドなぁ〜……」 ちょっとションボリ、項垂れた。 「頑張った、そこがえらい」 項垂れるよつはに学は言った。よつはの努力の結晶をもくもくと口に運ぶ。 学はちょんちょんと項垂れたままのよつはの頬を軽く突くと、ゆるゆる顔を上げたよつはに、にっと笑った。 「また今度、楽しみにしてるから」 笑顔と、『また今度』という言葉。……『次』の約束。 「……うんっ!」 いくら食べても、完成した料理の味は変わらなかったけれど。 ――『次』を励みにまた頑張ろう。 そう、思えた。
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