●『エトナとさやかのクリスマス』
聖なる夜に雪化粧を施された小さな教会。 柔らかな光が漏れるその中では――。
色鮮やかなステンドグラスとタイルで飾られ、中央には大きなツリー。それを囲むようにテーブルが並び料理が用意されている。 「さやかちゃんのドレス姿、とても綺麗だね♪」 「エトナさん、ドレス姿が、すっごくきれいです〜♪」 まるで、赤い大輪の花が咲き誇るようなドレスで綺麗に着飾ったエトナが、隣のさやかに微笑みかける。 赤い花とは対照的な、水色の可愛らしい花を思わせるショートドレスを纏ったさやかも、元気な明るい笑顔をみせた。 二人は、テーブルに並んだ豪華な料理に舌鼓を打ち、色々な話をした。 かたや中学生、かたや卒業生。年齢の違う二人は、普段の生活も違い、日々の生活で感じる感覚も違う。 だからこそ、お互いの話が刺激になって楽しい。エトナは昔の感覚を思い出し、さやかは未来に憧れる。 そして、ここだけの話という、恥ずかしかった出来事の暴露大会。 「それが、すっごく恥ずかしくて〜」 「あはは、それは恥かしいね。私なんかね……」 さやかは思い出して顔を真っ赤にしながらも、今だから、そして、エトナにだからできる話を打ち明ける。それを楽しく聞いて笑い、お返しに自分の番だと、口を開くエトナ。 まるでそれは、パジャマパーティーのような、修学旅行の夜のような、そんな楽しい女の子だけの時間。男の子になんか聞かせてあげない、或いは、聞かせられない女の子だけの秘密。素敵なロマンスもいいけれど、女の子同士の会話って、なんでこんなに楽しいのだろう。 楽しく食べる食事は、普段の何倍も美味しい。確かに、豪華な食事で美味しくないわけがないのだが、笑顔のスパイスは更に美味しくしてくれるのだ。 二人ともナイフとフォークを置いて、 「食事も済んだし、少し踊ろうか?」 「はい♪ 踊りましょう♪」 エトナが提案して、さやかが笑顔で立ち上がる。 二人でテーブルを隅に移動して、充分踊れるくらいの場所を確保すると、赤い大輪の花と水色の可愛らしい花、二つの花が踊り出した。
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