●『二人のSilent night』
「き、緊張するな……」 淡く柔らかい光に照らされたツバサの顔は、言葉通り少し固くなっていた。 「そ、そうだね」 答えた真心の笑顔もどこか固い。 窓辺には少し小さめのクリスマスツリー。そして、窓際のテーブルにはレトロな雰囲気のあるキャンドルホルダーが淡い光を灯す。 灯りを挟んで向かい合って座る真心とツバサ。 初めてのクリスマス。恋人になって初めて迎える特別な聖夜だ。 見つめ合う二人の頬がうっすら色づいているのは、きっとツリーの電飾のせいだけではないだろう。 「え、えっと……」 ツバサは男らしく何か話題を振らなければ、と思うものの、緊張してしまって上手く頭が回ってくれない。 「雪……だね」 窓の外を見た真心がぼそりと呟いた。 明かりはツリーの電飾と淡いキャンドルの炎だけ。少し暗い中で、窓の外を見つめる真心は凄く綺麗に見えて、ツバサは一層ドキドキしてしまう。 「うん」 頷きながら、ツバサも窓の外に視線を向けた。 優しく降り続く雪は、初めてのクリスマスを一層特別なものにしてくれて。 「ホワイトクリスマス……綺麗……」 呟く真心の横顔があまりにも綺麗で。 「……真心さんが綺麗……」 「ぇ……?」 ツバサの言葉に驚いた真心が振り返る。 「え、いや、あの……な、なんてっ……はは」 (「な、何言ってるんだボクっ! 確かに真心さん綺麗だけど、そんな急に言われたら真心さんだってびっくりするじゃないかっ!」) 照れ隠しに笑ったツバサの顔は更に真っ赤になっていた。 「ふふ……思い出すね。LOHAS庵の皆と行った秋の天体観測……」 楽しかったね、と真心は笑顔で続ける。 「あの時、流れ星にしたお願い、叶ってるな」 ツバサは思い出して笑顔を浮かべながら呟いた。 (「『真心さんとずっと一緒にいられますように』っていう願い事、流れ星が聞いてくれたんだなっ」) 考えるだけで嬉しくなる。こうしてクリスマスを一緒に迎えられて、二人きりで雪を見て――。 「あたしも……ずっとツバサの近くにいたいって思ったから、二人のお願いを聞いてくれたね」 にっこり微笑む真心は、何だかいつもより大人びて綺麗で、ツバサの心臓はずっとドキドキしていた。
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