●『三度目は、街中で…♪』
大きな綺麗にラッピングされた箱を持つサラリーマン風な中年の男。今夜はサンタクロースになるのだろう。 バッチリメイクをしたOL風の女性。愛する男とこれから聖夜を楽しむのか。 多くの人を飲み込み、多くの人を吐き出す駅。 楽しそうな雰囲気の中、コートにマフラーの暖かそうな格好をした、やみぴも例に漏れず、しかし、どこか気だるげな表情で立っていた。 気だるげであまり楽しそうではないが、彼の纏う空気はどこか暖かく、そして、この雰囲気を楽しんでいるようにも見える。 「やみぴくん! ごめんね! 遅れちゃって!」 白いコートを着たコノハが、小走りに駆け寄ってきた。 「大丈夫。ボクも今来たばかりだから」 にこりと微笑む。早く着きすぎてしまって、鼻の頭が寒さで赤くなる程、ここで色々な人を見ていたが、そんな事はどうでもよかった。コノハの笑顔が見られて、寒さなど、すっかり忘れてしまう。 「じゃ、お買い物行こ♪」 コノハが元気に微笑んで、やみぴの腕に自分の腕を絡ませ、やみぴの手、全ての指の間に自分の指を入れた恋人繋ぎをした。 「綺麗だねー♪」 「うん」 コノハが綺麗な街のイルミネーションを、楽しげに眺める様があまりにも可愛くて。その笑顔が煌びやかなイルミネーションに負けないくらい輝いていて、やみぴは自然と顔が綻ぶ。 ふとコノハの足が止まった。何か気になる店を見つけたようだ。 「?」 何が気になったのだろうと、やみぴもコノハの足が止まった店を見る。 そこの店はアパレル関係のショップのようで、ショーウィンドウには、白い綺麗なドレスが展示されていた。 それをただ無言で、羨望の眼差しで見つめるコノハは、ギュッとやみぴの腕を強く抱く。 やみぴも、コノハによりくっついて、 「着たい?」 優しく微笑みかけると、コノハは顔を赤くしながら、返答に躊躇っていたようだが、コクリと頷いた。 「いつか……ボクの横で、皆が憧れるドレスを着てね」 柔らかく、この寒さも忘れるくらい柔らかく、やみぴは微笑んだ。
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