●『二人きりのクリスマスパーティ』
「クリスマス、一緒にケーキを作りませんか?」 「ん……? ああ、いいぞ……?」 誘いかけた聖の言葉に、聖弥はそう頷き返した。
それが、クリスマスの少し前の出来事。その約束を果たすため、クリスマスイブの日、二人は一緒になってエプロンをつけてキッチンに立っていた。 手分けして材料を計り、手順に従ってそれらを混ぜていく。聖が完成した生地を型に流し込んでオーブンヘ運ぶ間に、聖弥はボールに入れた生クリームを泡立てていた。 「じゃあ、イチゴ切りますね」 「ああ、頼む」 「はい。……そういえば、イチゴといえば、少し前の事なんですけど」 スポンジに挟むためにイチゴをスライスしながら、聖は何気なく先日学校であった出来事を語って聞かせる。それを聖弥は静かに、微笑ましげな顔を浮かべて聞く。 ……2人の関係は、いつもこう。 殊更に愛を語り合ったり、そういった時間を過ごすわけじゃない。 でも。 素直で一途で、彼が大好きな聖が楽しそうに喋る様子を、無口な聖弥が静かに耳を傾ける。ただ、それだけの時間が、2人にとっては何よりも心地よくて……幸せな時間なのだ。
「……あっ」 焼けましたね! と聖がオーブンの前に走る。ふんわりと狐色に焼けたそれは、とても美味しそうな匂いがして。2人は思わず笑みを浮かべ、ケーキ作りを続ける。 クリームと一緒にイチゴを挟んで、重ねたスポンジへ更にクリームを塗って。 それから2人で一緒になって、ケーキにたっぷりホイップクリームを載せて、残ったイチゴの粒を飾って、デコレーションしていく。 「これは、この辺でしょうか」 「そうだな……」 聖が砂糖菓子の人形を置き、それにあわせて聖弥がツリーとサンタの飾りを添える。 ケーキの上で手をつなぐ、2人を模した人形の姿に、ふっと笑って。 「完成……だな」 「はい!」 一緒に作ったケーキは、とっても綺麗にできて。なんだか嬉しいな、と聖は満面の笑みを浮かべる。それがまた、聖弥にとっても嬉しい出来事で……。 「じゃ……運ぶか……?」 「そうですね。お料理も出しましょう」 材料の買い出しをした時、一緒に買ったチキンやオードブルと共にケーキをテーブルへ運ぶ。出したグラスに添えるのは、クリスマスだからとデコレーションされた飲料の瓶。 「じゃ……メリークリスマス」 「メリークリスマス」 互いに持ったグラスを鳴らすと、2人は笑顔でクリスマスを祝う。
……楽しいパーティの時間は、いつか終わってしまうけど、でも。 今という、この時間を大切にしたいから。 2人は大切な人と共に過ごす、この大切なひとときを楽しく過ごすのだった。
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